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「あ・・えっと―・・」
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にこにこと私を見つめるだけで
何も話そうとしない櫻井先輩。
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そんな先輩に、痺れを切らし
私が沈黙を破る。
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翔「ん？どうかした？」
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心臓がドキドキいってるのが伝わりそうなくらい
静かだったから話しかけた。
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なんて、言えやしない。
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「き・・キス・・したの、何でですか？」
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そう問うと、
ｷｮﾄﾝとした表情になり、
優しい声で答える。
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翔「だから、お礼のお返し。」
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本当に、私から一ミリも目を逸らさないから
どんどん恥ずかしくなって
勢いよく立ち上がる。
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「もっ、もうすぐ、ﾎｰﾑﾙｰﾑ始まっちゃうんで！」
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そう叫び、
保健室の扉を思い切り開けて飛び出るけれど、
唇に変な違和感があって
櫻井先輩の顔が頭の中に焼きついたままだった。
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私って、こんなに早く走れるの？
ってくらいに猛ﾀﾞｯｼｭして、
風を受ける。
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教室の前に着く頃には
前髪がﾎﾞｻﾎﾞｻだった。
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教室へ入る前に、
中から高くて可愛らしい声が聞こえて
目の前のドアが勢いよく開く。
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ﾊﾙｶ「きゃ・・・って・・A？」
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いつも通り可愛らしいﾊﾙｶが、
反射的に悲鳴を上げて
すぐに気がつく。
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「・・お、おはよう。」
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素気ない態度を取らないよう、
慎重に言葉を選んで
ﾊﾙｶに渡す。
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ﾊﾙｶ「あっ、そうだ。今日クッキー作ってきたの。」
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可愛らしい女の子は
可愛らしい事をして、ちゃんと可愛いから羨ましい。
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ふわん
とした笑顔を私に向けて
淡いﾋﾟﾝｸの包み紙をそっと開くﾊﾙｶ。
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包みの中は
甘くて、香ばしい匂いがした。
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ラッキーアイテム
革ベルト
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作成日時：2012年3月11日 14時
