過去と ページ34
男女の喧嘩を体験した
と言っても
にかが何故か怒っていただけ
もっとこうお互いに言いたい事を言い合ってしばらく口をきかないとか
そんなのを想像していたけれど
あっけなく終わった
素直に嫌な感情を表に出せる彼が羨ましかった
それを子どもっぽいと捉えられるかもしれないけれど
私にはすごく素敵に思えたの
こうしたらダメなんじゃないか
そんな事ばかり考えている自分は
全然 成長していない
たかちゃんに告白された時
私は何を考えていたんだっけ...
20歳の誕生日のあの夜
「Aもやっと大人だな」
まあくんがビールを飲みながらたかちゃんに言った
「そうだな」
感慨深い表情でたかちゃんもビールを飲んだ
それを見て目の前にあったビールグラスに口をつけてみる
「うッにが」
ビールなんて20歳になれば誰でも美味しく感じるのかと思っていたのに
そんな私を見て2人は笑い合っているのが腹立たしい
「まだまだお子様って事なんだわ」
そう言ってまあくんの視線がたかちゃんに向けられて2人の視線が合わさるとアイコンタクトをした様に見えたのは気のせいだろうか
苦すぎて飲めないので緑茶でも頼もうかとメニューを開いたら
「Aあのさ」
たかちゃんを見るといつも真面目だけれどそれ以上に真剣な面持ちで私を見ていた
「結婚を前提に交際したいんだけどいいよね？」
交際とは？もしかして彼氏と彼女になるって事？
突然の事で驚きはしたけれど いいよね？って言い方は それが１番いいよねってことなのかなあ
まあくんの顔を見れば 満足そうに微笑んでいる
「お前は 貴志と一緒にいるのがいいって貴志のこと好きだろ？あんなにべったりだったんだから」
好き...
やさしくて頭も良い甘いマスクのたかちゃんは結構モテる人だ 歴代の彼女に嫉妬したりもした
それがここ最近ぱったり彼女も見なくなって私と交際するって言うんだからたまげた
動揺して目の前のグラスを勢いよく持って流し込んだらビールだった事を忘れていた
「ううッ」
また苦しむ私をやさしい瞳でみつめるたかちゃん
爆笑しているまあくんとは大違いだよね
この人と一緒にいればきっと平和に幸せになれる気しかしない
それは好きってこと？
「たかちゃんのお嫁さんになる」
幼い姿の私が20歳の私の頭の中に現れてにっこりと笑っている
断る理由なんてないのかもしれない
「うん わかった」
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作者名：８みつ | 作成日時：2020年6月20日 23時
