Shiny nails (ページ27)

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「辛いの好き」

キッチンを覗くとAは使い捨てのゴム手袋を嵌めて作っている

「なにそれ」

これですか？って手を上げて見せてくる
そうそれって頷くと

「料理と掃除の時はいつもこうですよ」

「なんで？」

「お客様の手足を触るのに荒れていたら嫌じゃないですか？触られたら痛いですよね」

そう言って包丁から目線を移動して俺をみつめる

「にかさんもせっかく綺麗な指なんだからした方がいいですよ」

と言ってまた包丁を動かした

へえ
プロって感じでいいじゃない

俺も手タレ目指してやってみようかな
なんつって

「いただきますッ」

「匂い残ったらお仕事に影響します？」

「キムチ？別に」

「キスシーンとかないんですか？」

「ねえしッ」

まずドラマに出てませんけど
真面目な顔をして軽く心をえぐってくるわ

豚キムチを食べる俺の手を見て

「左利きなんですか？」

「いや右だけど」

不思議そうにしながら彼女も箸を口へと運ぶ

「うまいねいつでも嫁にいけるじゃん」

ああ
嫁にいくんだったっけ
言葉のチョイスミスったや

変な空気が2人の間を流れ出してしまって
仕方ないからその空気に乗って言ってみた

「ほんとに浮気する覚悟あるの？」

途端に泣きそうな表情になる彼女を見ているとこっちまで泣きたくなる

実らない恋に付き合う覚悟なんてないって
そこまで割りきれない

でも一緒にいたいとも思う
お互いに情緒不安定すぎない？

頬に流れる雫が言葉にならない彼女の気持ちを代弁していて

定まらない想いが揺らめいているんだろう
そんな気がした