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「やっと短くするって決めたか」
「は?伸びたぶん切るだけだし」
なんだよって笑う桜木さんは
何故か俺を短髪にしたがっている
「にかの元気さに合う気がするんだよなあ」
「いつかね」
そう言って鏡越しからパーテーションを確認する俺に気付いたのか
「今日は休みだよ」
なんにも言っていないのに何でわかるんだよ
これが大人の男っていうやつか
「へえ」
少し大人っぽく返してみたりした
髪の毛を触りながら無言だった桜木さんが
俺を見ずにさらッと言う
「ウェディングドレスの試着に行ってる」
ウェディングドレスって結婚式で着るやつじゃん
それを試着するって事は
バカな俺でもさすがにわかる
そういえば
車の中で着信をスルーしていたのを思い出した
「彼氏いたんだ」
「ん...俺の親友」
「へえ」
やっぱり大人な返しなんて向いてない
今すぐ
マジかよ
うっそだろおッて大声で言いたいくらいだ
「あいつ免疫ないからあまりからかわないでやってくれよな」
やっと鏡の中で俺と桜木さんの焦点が合わさった
からかってなんかいない
ただ純粋に興味があった
彼女の事をもっと知りたいと思っていた
それだけだったんだ
知る前に見事に玉砕かよッ
「やっぱり少し短くする」
低めの声でそう告げると
「失恋でもしたか?」
イタズラな顔でハサミを動かし始めた
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作者名:8みつ | 作成日時:2020年6月20日 23時