第52話 ページ5
「ん、充電完了。」
凪くんはそう言って、満足そうな顔をしながら私から離れる。私を含めた彼以外の周りの人物は何が起こっていたのか全く理解できておらず、頭の上にはてなを並べていた。
「せ、誠志郎くん?何してたの?」
姫花ちゃんが多分今みんなが思っていることを代表して質問する。
「え、A充電してただけだけど。玲王、俺何か悪いことした?」
質問の意図がわからないとでもいうかのように、サラリと答える凪くん。凪くんから逆に質問されてしまった玲王くんは少々驚きながらも、
「いや、悪くはねぇけど。急に抱きつくのはないだろ!」
と、そう答える。
凪くんはその答えに口をバッテンにして「なんでよ。」と拗ねたような口調で言う。
「俺も、充電するー!!」
そんな凪くんに何か言おうかと口を開きかけた時今度は後ろから抱きつかれる。
「おい、蜂楽!!」
廻が後ろから抱きついてきたらしい。
それを潔くんが止めてくれる。それでも、「えー。」とぐずる彼を諭すように私は口を開く。
「廻、今試合中!!試合終わったら、いつでもできるから。ね?」
「えー?さっきのはいいのに俺はダメなの?」
「違くて!!さっきのは、急だったから拒否できなかっただけで…!」
あまりにも悲しそうにした廻の姿に、慌てて否定をする。そして凪くんの方を向いて、
「凪くんも、もうあんなことしないでね。」
と言う。
凪くんはまだ拗ねた様子だったけれどそれでも渋々頷いてくれる。
その様子を見たからか、廻もイヤイヤながらに離れてくれる。そんな姿に申し訳なくなって、心の中でもう一度謝っておく。
「さ!みんな場所に戻って〜!試合再開するよ。」
私は手をパチンと音を鳴らして合わせて、そう促す。そうすれば、選手の彼は自分のポジションに戻っていく。
私は急いで、広げた救急箱の中身を片す。
姫花ちゃんと一緒にフィールドの端に戻ろうと思い、姫花ちゃんを探してみた時。
私は、見てしまったんだ。
姫花ちゃんが、ひどく歪んだ、それはそれは嫉妬に狂ったような顔で、それでもどこか悲しげな寂しそうな顔で、私の方を見ているのを。そして、聞いてしまった。小さく誰にも聞こえないような消えてしまいそうな声で、
「私がヒロインなのに…。もう、これ以外手がないのかな。」
と呟いていたのを。
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作者名:そっち | 作成日時:2024年2月11日 11時