第59話 ページ12
「実は姫花に海外のクラブおよび大学の複数チームから、スポーツトレーナーとして来ないかとオファーが来ている。」
「それ、って…。」
その先何を言われるか分かったような気がして、私の口からは乾いた言葉しか出てこない。
それでも、絵心さんは話を続けていく。
「あぁ、そのまさかだ。姫花がもしその誘いを受けるなら、彼女は
「…っ!姫花ちゃんは、どう、考えてるんですか?」
平常心を保とうとしながら、かろうじて、私は言葉を紡ぐ。姫花ちゃんを夢を叶えるためには海外に行くのが、今回のオファーを受けるのが絶対にいいのは私だってわかる。私だってわかるのだから、当事者である姫花ちゃんはもっとわかってるはずで。
でも、それでも、姫花ちゃんが決めかねているのは、決意がつかないのは何故なのだろうか____。
「さぁ?姫花自身俺にだって詳しく話してくれてないんだ。」
絵心さんはそこで言葉を切った。
少し考えた素振りを彼は見せたけど、すぐ口を開いた。
「確実にわかるのはな。アイツが最近何かに焦っているということだけだ。」
「焦る…?」
その言葉の意味を理解することが私はできなかった。だって、姫花ちゃんはヒロインだから。私よりも圧倒的に勝ってて。それに、彼女ほどの能力があれば、絶対に世界一のスポーツトレーナーになることができる。
それなのに何故、焦る必要があるのだろうか。
「なんでかは流石にわからないけどな。今の状況じゃ、情報が少なすぎる。ただ、姫花に無理はさせたくないからな、彼女の答え待ちだ。」
絵心さんは最後にそう言った。それだけ言えば、もう言うこともないというように彼はくるりと椅子の向きをビジョンの方に変えてしまった。
彼が椅子の向きを変えた後も私はしばらくそこから動けなかった。結局何一つ、私は理解しきることができていないから。
姫花ちゃんが夢を叶えられるのは姫花ちゃん自身も、私もとても嬉しいはずで。でも、それなのに姫花ちゃんが悩んでいるのは、焦っているのは、本当に何故だろうか。
あの時の姫花ちゃんの目は、最近私の身の回りに起きている不可解なことは全て関係してあるのだろうか…?
姫花ちゃんは、こんなにも愛されているのに、恵まれているのに。さっきの絵心さんの言葉からもわかる。本当に大切にされているのだ。
姫花ちゃんは本当に何に悩んでいるのだろうか…?
私は胸にモヤモヤと嫌な予感を残したまま、この部屋を後にした。
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作者名:そっち | 作成日時:2024年2月11日 11時