第31話 ページ33
「怪物…?」
姫花ちゃんの口からおそらく無意識で言葉が出る。
姫花ちゃんと潔くん、2人とも混乱しているのだろう。かという私だって少しだけ驚いている。
私に言う時はあんなに不安そうに、慎重だったのに、今回はスラっと廻の口から出てきたからだ。
なんでだろう、と思った時一つ思い当たる節があった。
廻は彼、潔くんからそして姫花ちゃんから嫌われないと感じたのではないか。それか、どちらか一方に嫌われないと感じたか。
なら、どちらかにもしくは両方に廻のことを理解することができる人がいる___。
あの2人の中にも、“怪物”がいるのかもしれない。
そんな事を考えている私や、ただ困惑している姫花ちゃん、潔くんを置いていって廻はさらに話を進める。
「サッカーしてるとね、ソイツが出てきて言うんだ。」
廻はボールを足で動かしながら。そして、まるでフィールドを踊っているかのように私たちの間を見事に交わしながら言う。
「“ゴールを奪え”、“もっと踊れ”って!」
廻は潔くんへ急接近しながら続けていく。
「でもあの時はさ、怪物が言ったんだ。潔にパスを出せって。」
その言葉を聞いた時、私は確信した。
彼は、廻は、潔くんの中に自分と同じもの、“怪物”を感じたんだと。
そして、そんな私の考えを裏付けるかのように、廻は彼に、潔くんに言い放った。
「アイツの中にも怪物がいるって。」
と。
そう言われた潔くんは先ほどの姫花ちゃんのように、
「怪物…。」
と、呟いている。
「俺はその声耳をすませてサッカーをする。そんだけ!聞こえるでしょ?怪物の声。」
潔くんは、何か心当たりがあるのか驚いたような顔をして息を呑む。そして、何かを掴んだような顔をする。
そんな潔くんを見ながら、廻は華麗にボールを操り、リフティングをしながら続ける。
「メッシもクリスティーノ・ロナウドもノエル・ノアもすげぇ奴はみんな心の中に怪物を飼ってる。きっとそれがストライカーの証なんだ。俺はそう信じてる!」
そう言いきった廻は、ボールを一層高く上げる。その瞬間少しだけ周りの雰囲気が変わる。少しばかり緊張が走ったものに。
「だからね、潔。俺はここに来れて良かった。潔に会えたから。」
その雰囲気のまま、廻はそう続けた。
言いたい事を一通り伝え終えたのか、周りの雰囲気が先程と同じ砕けたものに変わる。
その時、廻は何か思い出したかのような顔をして、
「あ!Aに会えたからってのもあるよっ♪」
と言ってくれた。
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作者名:そっち | 作成日時:2023年11月30日 14時