本当の心 ページ28
ちょっと休憩のつもりだった。
外の空気を浴びてまた仕事に戻るつもりだった。
それなのに、今目の前にはお風呂上がりなのか濡れた髪に、それとは正反対に汚れた着物で血だらけの猫を抱えるアイツ。
一瞬、何が何だかわからなかった。
医務室へ向かうかと思えば焦った顔をして反対へと向かおうとする。
「いや待て!手当するなら反対、」
『間に合いませんよ』
そう言ったソイツの口調はいつになく厳しい。
そして、間に合わないなら大切な人へ会わせるという。
まるで、その猫には絶対に会いたいヤツがいると信じて疑わない口調だった。
なんでそこまで必死になっているかは分からない。
でも、何故だか手伝わなければならない気がした。
『何のつもりですか?』
「会わせてぇんだろーが。2人で探しゃすぐ見つかる」
そう言って目の前の茂みを探しに掛かると後ろからお礼が聞こえた。
猫の為だなんて。
半分嘘で半分ホントだ。
茂みの他に軒下も探す。
ふと裏へ回れば黒い塊。
「おい、!」
近寄ってみても、反応なんてなかった。
触ってみれば少し固くなった皮膚と死体特有の腐敗臭。
後ろから来たアイツはそれを見て驚くでもなく泣くでもなく、ただ見つめた後にそっと壊れないように抱きしめた。
不謹慎にも、俺は何故かそれを綺麗だと思ってしまった。
立ち上がったソイツはもう1匹の方へと走る。
恐らく、あの猫ももう間に合わないだろう。
ゆっくりと、しゃがみ込むソイツに近付けば至極愛おしそうに、眠る猫達を撫でていた。
そして、世界は残酷だと謳う。
なら何故お前はコイツらに肩入れした?
何故そんなに愛おしそうに見つめてる?
お前の言う大切な“人”って、誰だ?
そんな思いを押し込んで最初の疑問だけをぶつけると、アイツは、Aは、
『自分と重ねてしまったんですよ』
なんて、笑って言った。
きっと、その悲しげな笑顔と頬を伝った光は、Aの初めて見せた本当の心だった。
A、お前は一体、何を抱えて生きている…?
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さやままま。(プロフ) - 黒猫♪♪さん» うわあああ遅れましたすみません!!頑張ります!ありがとうございます!!(*´ω`*) (2018年2月10日 13時) (レス) id: 79ed4b307e (このIDを非表示/違反報告)
黒猫♪♪(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです!続き楽しみにしてます! (2018年1月14日 16時) (レス) id: 80ca512ce2 (このIDを非表示/違反報告)
さやままま。(プロフ) - 高杉紗夜香さん» うわー!ありがとうございます!!めっちゃ励みになります頑張ります!!(*´ω`*) (2018年1月13日 12時) (レス) id: 79ed4b307e (このIDを非表示/違反報告)
高杉紗夜香(プロフ) - とても面白いです!更新頑張ってください!!応援しています! (2018年1月6日 21時) (レス) id: 47ea433c10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さやままま。 | 作成日時:2016年10月22日 8時