母上-2 ページ26
医者を呼んでから暫く経った頃、診察を終え難しい顔を向けられる。
「それで先生っ瑠火は!?」
「奥様は恐らく、長くても…1年かと。」
医者の余命宣告に父上と私は、言葉を失った。
「今の医療では薬を飲ませて症状を緩和させることしかできません…力になれず申し訳ない。」
「どうにかなりませんか!?瑠火が助かるのであれば、お金ならばいくらでも出します!千寿郎も産まれてまだ間もないんですっ!せめて、千寿郎が物心着くまで延命する事は出来ないんですか!?」
「…私の力ではどうにも。」
医者の悲しげな顔に槇寿郎は絶望を抱いた。
しかし瑠火は、そんな槇寿郎の腕を掴むと首を横に振った。
「槇寿郎さん…良いのです、むしろ、1年あるだけでもありがたいと思わなくては。」
「お前は、いいのかっそれでっ!」
「いいも悪いものありません…残された時間で私は出来る限りの事をするまでです。」
「瑠火っ…。」
医者を送った後、Aは呆然と杏寿郎達がいる部屋の前で立っていた。
『はぁ…はぁっ』
震える手を押さえてゆっくりと扉を開けると、Aの顔を見た杏寿郎が不安げな声を溢す。
『杏寿郎…母上の所に行こう。』
「姉上?」
Aは千寿郎を抱き上げてから杏寿郎の手を引いて、瑠火のいる部屋へと向かった。
「母上…?」
「杏寿郎、こちらへ。」
部屋に着くなり、泣いている父親を見て杏寿郎は事の重さを察し、恐る恐る瑠火の横に座る。
「貴方には包み隠さず、お医者様に言われた事を話しますが…それを聞いても悲しまないで下さい。」
「…は、い。」
瑠火は一つ一つ丁寧に説明すると杏寿郎は唇を噛み締めて涙を堪えた。
「貴方達には苦労をかけますが、千寿郎をよろしく頼みますね。」
「っはい!」
『はいっ』
その日の夜、Aは杏寿郎と千寿郎と三人で過ごした。
千寿郎と杏寿郎を寝かしつけ、Aは1人廊下で月を見上げていた。
「…姉上。」
『っ杏寿郎?』
目が覚めたのか、杏寿郎は扉を開けてAの横に立った。
「眠れないので…手を…握ってはくれませんか?」
『うんっ私も寝付けなくて困ってたんだっ』
「…。」
Aの我慢していた涙が頬を伝い、床にポタポタとシミを作る。
己の姉が泣く姿に杏寿郎は見ない振りをして、小さな手でいっぱいにぎゅっと手を握った。
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あまね(プロフ) - 続き気になる! (9月29日 0時) (レス) @page50 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
ぴーたん(プロフ) - meさん» いつも読んでくださりありがとうございますっ!!少しずつですが完結まで頑張っていこうと思います! (2020年10月22日 15時) (レス) id: 3f898f19d6 (このIDを非表示/違反報告)
me(プロフ) - 右の星を押したら既に投票済みでした..いつも楽しく読ませてもらってます!続きもがんばってください! (2020年10月22日 12時) (レス) id: 47178bfabc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぴーたん | 作成日時:2020年5月13日 14時