90%対10%の君 (ページ17)

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｢ジョゼフ｣

そう彼の名前をよんだ、ちょっと大きな声で、
さすがに聞こえたようで、｢ああ、なんだい?｣って
いつも私以外の人に向ける笑顔をむけた
私に見せる笑顔は本当の笑顔だと、あらためて気づいた
他の人に見せる笑顔は、君の瞳に光がない
いつもは美しく、君のいいところである瞳も
そのうその笑顔では美しくない、汚らわしい

私だって、気づいた君は、

｢え、A?｣

驚いた、目をまん丸にした

私が写真家の名前をよぶことなんて
あのあと一生ないと思っていた
でも案外早く、写真家の名前をよぶ時はきた

写真家が驚いているのは
私がジョゼフと、そうよんだからか、
嘘の笑顔を向けた相手が、私だったからか
わからないけれど、

｢……え、ちょっとまって、嘘、今ジョゼフっていった?｣

手で赤く染ったであろう顔を隠しながら、
私に聞いた、かなり焦っていたけど

｢うんよんだ、写真家ってよんでも
返事がなかったから、君が私のことを、無視するなんて
ないと思うけど、いちおのために｣

｢…………信用されてるんだ……無視しないって｣

そっちか、まぁ君にとってはその方が嬉しいのかな

｢なんか用があったのかい?じゃないとジョゼフなんて
よんでまで話しかけないだろう｣

｢なんで私の脚本をよんでいるの?
君の手汗でもついたらどうするつもり? コピーはないのよ?
手汗以前にその汚らわしい手で私の脚本に触らないで
というか、音読するな｣

いきなり色々なことを言われて
ポカーンとする写真家

普段は余裕そうだけど
今日は顔を苺のように赤く染めて
なぜか名前をよばれたことを恥ずかしがったり
驚いたりしていてすごく、面白かった

だから少しだけ気分が良くて
いつもより優しめにいった

｢……ああ、Aに了承もえずに勝手に読んだ事とかは
謝るよ……?｣

申し訳なさそうに、まだちょっとだけ赤い顔を見せて
私に謝った

｢早く戻しておいて｣

そう言って脚本用のノートを取りに行った
いつの間にか脚本家要倉庫と書かれた
小さな部屋が建てられていた

ドアを開ければそこには
何万冊もの私が愛用している脚本用ノート
こんなに書けないけど…、ノートの量から
荘園の主がどれほど私の脚本が好きなのかがわかった
誰かに私の脚本を好きになってもらえたのが何より嬉しかった