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「義勇さん、おはようございます」
「ああ」

義勇の大切な部分に触れさせてもらえて、Aが義勇との距離が縮まったような気がして喜んでいたところ、次の日から一転、義勇は一見今までと変わらないように見えるものの、目を合わせてくれないようになってしまった。

「今日で一週間…」

相変わらず吐いてしまうほどの苦しい稽古はつけてもらえてはいるが、この調子ではそれさえいつ辞められてしまうか分からない状況に、今まで義勇の気持ちを察しながら上手くやってきていた流石のAも、どうしたものかと頭を悩ませていた。

「すみません、今日の朝食これしかなくて…」
「構わない」

実は昨日、稽古終わりにうたた寝をしてしまったAは、今日の分の食材を買いに行けず、義勇に起こされて起きてみれば朝だった、という大失態を犯してしまったのだった。

最近、義勇さんのことで悩んでいて眠れなかったからだ…と肩を落としながらAがおにぎりを頬張ると、自分を見ていた義勇と一瞬目が合うものの、またすぐに逸らされてしまう。

「…辛いか」
「え?」

意味が分からなそうに義勇に目を向けたAに、義勇はほんの一瞬だけAに目をやって、「…稽古、辛いんじゃないのか」とおにぎりを大口で頬張る。

「…辛くない、と言えば嘘になりますが…それ以上に、義勇さんが私に一生懸命稽古をつけてくださることが、すごく嬉しいと思っています」

あまり義勇を見つめないようにと、Aは今日は寂しいことになってしまっている膳を見つめながら、笑顔を浮かべる。

「逃げてもいいんだぞ」
「…ふふ。どこに逃げるって言うんですか。…私には、義勇さんしか居ないのに」

ほんの少し纏う空気の変わった義勇にAがゆっくりと顔を上げると、今度は視線は逸らされずにじっとお互いを見つめ合う形になる。

「…軽率だった」
「いいえ。私を心配してくださっての言葉だと、分かっていますから」
「…俺もだ」
「え?」
「俺にも、お前だけだ」

いつもよりほんの少し柔らいだ表情でそう言った義勇は、特になんの他意もないのかまたすぐにおにぎりを頬張り、視線を膳に落としてしまう。

対するAは、大好きだった兄や父母にも言われたことがない心がじんわりと暖かくなる言葉に、胸の奥がきゅっと苦しくなるような初めての現象を感じ、確かに義勇が自分を心配するように、少し無理をしすぎたのかもしれないと、いつもはしないおかわりをして朝食を終えたのだった。

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チーズ(プロフ) - レインさん» コメントありがとうございますー!!不器用、じれったいをモットーにして書いたものなので、そう言っていただいて嬉しいです。最後まで読んでいただきありがとうございます! (2019年12月17日 21時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
レイン - 義勇さん不器用すぎていつ、くっつくんだ!早くくっつけ!クソッ!!見てるこっちがなんかアレだ!!(語彙力) 面白い!! 完結おめでとうございます! (2019年12月17日 20時) (レス) id: 05e6c43b69 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - たまごさんさん» 最後までお付き合い頂きありがとうございます!!そうだったんですね!嬉しいです!次作でもどうぞよろしくお願いします! (2019年12月1日 7時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
たまごさん(プロフ) - はああ・・・やはり良きです・・・完結おめでとうございます!!無惨様の作品は知らず知らずのうちに見ていました!!好きだなあと思って、作者誰だろ?と下にスクロールしたらまさかの・・・。僭越ながら次作でも応援させていただきます!! (2019年12月1日 0時) (レス) id: 8760f7a678 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - orangeさん» こちらこそ、最後までお付き合い頂きありがとうございます!ぜひ書かせていただきます(^^)もうしばらくよろしくお願いします! (2019年11月30日 23時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:チーズ | 作成日時:2019年11月13日 13時

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