言えない2文字(( 橙黄 )) (ページ1)

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「ちょ、すばるうう、冷たいっ、」

楽屋にはいつもこいつの声が響く。
そして、そいつが叫ぶ名前は俺とは違う人で。

「うっさいな、触んなぼけ、」

そうして、すばるくんはその肩に触れたその手をあっさりと振り払った。

俺はそれをしっかりと視界に入れる。

嫉妬と羨ましさに溺れていく。

「そんな事言わんといてや、好きやで、」

そいつは懲りずにすばるくんにくっつく。
そして"好き"という言葉をぽろり、と簡単に零している。

…ああ、ほんまに辛い。
こんな光景を毎日見て、
もう、どうしたらいいんかも分からへん。

そいつが楽屋で話すのは決まってすばるくんで、
口に出す名前で多いのもすばるくん。
大好きなのもすばるくん。
そいつ…、まるは結局すばるくんが好きなんだ。

「こんなにも好きやのに、すばるさーん。」

そうやって、すばるくんに笑顔を見せる。
その綺麗な笑窪を嬉しそうに作る。

そんな姿は見たくない。
その笑顔は俺以外に向けられるのが、
笑窪を作るのが俺じゃなくて他の人なのが。

辛くて、虚しい。

「…、」

俺は、その光景を見ていられなくなり、静かに立ち上がった。

「あれ？亮ちゃんどこ行くん？」

立ち上がった俺を見れば、まるは一旦視界を俺に移した。

そして、きょとんとした顔で首を軽く傾げた。

「あー、…トイレ？」

と、俺はその下手くそな笑顔を作れば、もう相手と話したくなくて、勢いよくドアを開けて、楽屋を慌てて出てとにかくその場を離れた。