メガネちゃんと王子様っ！ (ページ29)

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『 28 』ページ29

『えっ……と』

なんて、言えばいいんだろ。
楽しいはずなんかない。だけど、そんなの正直に言える自信もない。何か、うまい言い回しを考えなきゃ。

グルグルと思考が巡って今までの下手くそな言い訳を思い返して何とか使えるものはないかと考える。

HS「俺はね、疲れたかな」

『……え？』

ｶﾁｬｯとカップがお皿に置かれる音が響いた。

HS「学校、疲れちゃった。

俺って明るくて友達多いイメージでしょ？」

そう言って笑う先輩は私が初めて会ってからよく見る顔。その顔は本当に明るくて希望みたいで友達もきっと沢山いるであろう顔。

でもその瞬間、その顔を一瞬で真顔に変えてしまう。

HS「でも、実際家にいる俺はずっとこの顔なんだ。誰とも話さないしずっとぼーっとしてるかスマホいじってるか。その方が、楽なんだ。

だから学校でイメージを壊さないように口角ずっと上げて友人達に乗って楽しむのはかなり気を張っていて疲れるんだよね。」

そして、今まで見た事のない少し困った笑い顔をする。

HS「しかも、俺はこんなんでも一応いつかはこの店を継ぐ跡取りだからさ。勉強もすごい厳しくていつもテスト期間にギリギリで頑張ってなんとか順位表の上位に入るように頑張るけどナムジュナには勝てないし…それを見た母さんは怒るし…。」

私、勘違いしていたかも。
辛くて惨めな重いばかりしてきた私の気持ちなんて王子様のように育てられた彼らにはわかりっこないって思ってた。

だけど、それと同じように私は彼らの苦しみを何も分かってなかった。

HS「俺たちみたいな跡取り息子に寄ってくる友達なんてみんな媚び売りに来てるようなもんなんだよ。

だから、本当に信用できるような友達なんて滅多にできない。そんな中でもナムジュナだけは信頼できたんだ。だから、争いたくないけどブランドって…なんで争う運命なんだろうね」

それって…

HS「ナムジュナの家はうちのライバル店なんだ。

だから、ナムジュナと俺の関係をうちの家はよく思ってない。ナムジュナと俺には距離が必要なんだ。」

ホソク先輩…

HS「ブランドとか、人付き合いとか…諸々含めて俺は学校での生活に疲れた。

で、Aちゃんは？」

私だけ、じゃないんだ…。
学校が辛いのは…私一人じゃ、無い…。