【文スト】中原中也の奮闘記録

ロックで ページ27

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―――鳩が豆鉄砲を食らったような顔、とはよく云ったもんだ


興味本位で訊いた私の素朴な疑問に、完全にフリーズしてしまったマフィアの五大幹部殿

役職に相応しくない其の表情は、一言で云えば阿呆面



『え、嘘でしょ？図星なの？』

「そっ……ンなわけねぇだろ莫ァ迦！！」



いきなり大きな声を出したかと思うと、続けて「バーカバーカ」と、何処かの幼稚園児みたく頭の弱そうな暴言を吐き捨てて部屋を出て行った中原君



『ええー……』


――凄い判り易いんだけど…何あれ…


やたらと万年筆を燃やしたがるなあとは思ってたけど、真逆そんな事迄隠していたのか

逆によく今迄悟らせなかったよね、大したもんだ


じゃなくて……



『………いつからだろ…』



って、そうでもなくて



云い様の無い感情がぐるぐる回る脳内を急ピッチで整理しようとするけど、如何にも落ち着かない



『と、取り敢えず、もう一眠りするか……』


これ以上は二進も三進も行かないと悟り、早々に諦めて寝る事にした

勿論、寝付けたのはここから数時間経った後である





＊





「―――あー、糞、最悪だ」


絶対ばれた

あいつが万年筆を握ってる時だけ気を張っときゃ佳いって思っていたが、浅はかだった


勝手気儘で自由奔放なあいつは、いつ何を云い出すか判ったもンじゃねェ

真逆、あンなド直球で訊いてくるとは思ってなかった



俺の焦りように、疑いを持たない方がおかしい


「………終わった…」


色々と終わった気がする


あの女の事だ、絶対に面白がって揶揄ってくるに違いねェ、最悪構成員に吹聴する可能性だって充分に有り得る



「…終わった」



――なんで俺あんな女に惚れちまったンだ、頭おかしいンじゃねぇか…



行きつけのバーで独り頭を抱えて、酒を煽りながら自問自答を繰り返す

今日ばっかりは二日酔いなんて気にしてられねェ



「…マスターおかわり」


大きなかち割り氷が一つ浮くロックグラスの中身を一気に飲み干して、又頭を抱えた


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