ゴールデンタイム 1 ページ1
夕方の商店街は、その日一番混雑するゴールデンタイムである。主婦層を中心に、だが近年は若い男性も多く、手にはビジネスバッグとエコバッグなんてものが日常化している。総菜屋、なないろやに詰め掛ける客も例外ではない。常連のマダムたちや、仕事帰りのサラリーマンたちからの注文にあくせくと受け答えする神山は、忙しいながらもこの様子を見るのが好きだった。
「とも兄ぃ、唐揚げがあと十個！」
「おーけー！ 西畑、今持ってくるから待っててな。他は大丈夫そう？」
「うーん、今のところは大丈夫！」
「りょーかい！」
現役大学生である西畑大吾が神山へのオーダーを出す。よく通る声だ。神山の返答を聞き届けると、唐揚げを所望しているマダムにキラキラスマイルを向けた。マダムがあらぁ、ゆっくりでいいわよぉ、と優しい声を上げるが、西畑の笑顔がマダムの声を柔らかくさせていることは間違いない。
唐揚げが到着するまでの間は束の間のおしゃべりタイムだ。神山が揚げたての唐揚げを準備しながら店先に視線を遣る。
「お風呂場の鏡めっちゃ曇るんやけど、なんかええ方法って知っとる？」
「お風呂場の鏡なぁ。あれよお曇るんよな。おばちゃんは、くしゃくしゃに丸めたラップに歯磨き粉塗って、それで鏡掃除し取るんやけど、これが滅茶苦茶ええんよ」
「ええ、歯磨き粉？ ホンマ？」
「ホンマホンマ、騙されたと思ってやってみ？ えらいびっくりするでぇ」
和気藹藹と、家事のことについて楽しそうに会話する西畑とマダムにおしゃべりタイムを伸ばしてやりたい気持ちが募っていくが、まだまだ絶えることなく来店するお客様の数に眉を下げる。トングで最後の唐揚げを摘まみ上げると、店先に足を向けた。神山の姿を視界に捉えたマダムが残念そうな顔を浮かべる。その残念がりようはさながら握手会のようだ。思わず苦笑うと、マダムは慣れた手つきで財布を取り出した。
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umisorame(プロフ) - 待ってました。大好きです。これからの更新楽しみです！ (2022年9月26日 18時) (
レス) @page14 id: 67c933aaba (このIDを非表示/違反報告)
ハル７ - こんばんは。初めてコメント致します。更新の日付を見て飛んで来ました！せろ様の作品の世界が大好きです。お体、お大事になさって下さい。応援しております！！ (2021年6月26日 21時) (携帯から) (レス) id: f6711a1d35 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：せろ | 作成日時：2021年1月11日 2時
