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「ここに来る前にお弁当譲られまして。偶然にも本来食べるべき人間と会ったので、渡したってところです」
神山の名前は伏せて、またどういった経緯で入手したのかも明かすことなく、事実だけを述べる。藤井の説明に更なる疑問符を浮かべる中間だが、その質問をさせるよりも早く、藤井が口を開く。こういう時、立場が異なるというのは便利だ。
「会議まで時間ないっすよね？」
「あ、せやね。こっちです」
強行突破した感が否めないが、歩き出した中間に重岡がほっと息を吐く。藤井が重岡の背中を叩いた。
「神ちゃんのことについてなんも言っとらんのやろ？」
「……何でわかったん？」
「声掛ける前にトイレ行っとったから、トレイに行くまでの間で二人の会話が聞こえちゃったんよ。中間さんがものの見事に神ちゃんのこと女の子やと勘違いしとんのとか」
まあ、ともって聞いたら「ともこ」か「ともみ」とか連想するわな。と藤井が中間の思考に理解を示す。
藤井は昔から人の機微に人一倍聡かった。その聡明さが今の職業を起こす上で研ぎ澄まされていったことは確かなのだろうが、続いた「神ちゃんかわええしな」の言葉によって一気に台無しになる。
重岡がそうやった、こいつドが付くほどの天然やった、と天を仰ぐが、藤井にそんな自覚はない。
藤井本人は天然呼ばわりに対して撤回を求めているが、撤回されることは未来永劫ないだろう。
「お前ホンマ、サラリーマンにならんくて正解やったわ」
「何なん、いきなり」
「いや、こっちの話や。まあ、流星の機転によってあの場から逃れられたのは確かやけどな」
片眉を下げて訝しげな表情を作る藤井を褒め言葉だと宥める。穏やかな性格の藤井相手だからこその重岡の態度だ。
神山とまでは行かないものの、長い付き合いである。互いに互いの許容や思いを深く理解していた。重岡の神山に対する想いも藤井は悟っているらしいが互いに話題にはしない。その代りさりげない援護射撃ほど心強いものはなかった。
「助かった。あっこでバレてたら全部明るみになるところやった」
「いや、あそこで弁当渡した俺も間が悪かったわ。気にすんなや」
「お弁当も、とものこともありがとな」
「このお礼はこの後の会議で態度に示してくれたらええで」
「それとこれとは話が別や」
おーい、エレベーター来るで。中間の声に重岡と藤井が顔を見合わせる。少し小走りで向かうと、エレベーターは丁度やってきた。
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せろ(プロフ) - ミウさん» お初目にかかります、せろです。この度はご感想、ありがとうございました。何度も読み返して頂いているとのこと。本当に感謝しかありません。きっと近日中には続編が上がるはず。気長にお待ちいただけると幸いです。寒い日が続いています。体調にはお気をつけ下さい。 (2020年11月2日 20時) (
レス) id: c4282b60a2 (このIDを非表示/違反報告)
せろ(プロフ) - 憂さん» お初目にかかります、せろです。この度はご感想いただき、ありがとうございました。本当に感想をいただけることが励みになっております。微力ながら憂さんの活力になれていると嬉しいです。少しずつ今書いています。温かいお言葉痛み入ります。憂さんもご自愛ください。 (2020年11月2日 20時) (レス) id: c4282b60a2 (このIDを非表示/違反報告)
せろ(プロフ) - ま。さん» お初目にかかります、せろです。ご感想、ありがとうございました。今回の更新は私もきゅんきゅんしてました。正門君に…っは！Jr.の子達も出して大所帯となってきました。きっと今後はしげちゃんがきゅんきゅんさせてくれるはず…。今後もお楽しみ下さると幸いです。 (2020年11月2日 20時) (レス) id: c4282b60a2 (このIDを非表示/違反報告)
ミウ(プロフ) - はじめまして。何回も読み返したくなるくらい面白くて好きです！これからも無理なさらない程度に頑張ってください。更新楽しみにしています(*´`) (2020年11月2日 11時) (レス) id: 118c412c42 (このIDを非表示/違反報告)
憂(プロフ) - はじめまして。とっても楽しく拝見させていただきました！これからも更新楽しみにしています！無理なさらずにがんばってください(^^) (2020年10月30日 3時) (レス) id: 1b0f5e1577 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：せろ | 作成日時：2020年10月17日 2時
