5 ページ29
「え、いいの？ 別に俺触ってても怒らんで？」
サンドイッチを両手で掴んだ神山が首を傾げる。眉をこれでもかと下げて案じる表情は、年下ながらも二人の庇護欲をそそる。だが、すぐに脳裏に重岡の顔が浮かぶと、その感情も木っ端みじんに砕け散る。やっぱり男子大学生。そこは命が惜しい。
「大丈夫ですよ。正門の鬼の所業に怒りのメッセージが飛んでいるだけなので」
「俺は鬼じゃないで？」
あはははは、と大橋が誤魔化して笑うのに対して、正門は真面目中で返答する。噛み合っているはずなのに噛み合っていない会話を目の前にした神山は、案じる表情から一転、にこにこと笑顔を浮かべると、そっか！ とサンドイッチを頬張った。両頬を膨らましてもきゅもきゅと食べる姿がリスのようで可愛らしい。
唐揚げに夢中になっていたはずの大橋は、その場面を見遣るや否や、何かを思いついたのか、素早く携帯を手に取ると、無音カメラでニコニコと目を閉じてサンドイッチを咀嚼する神山を激写した。その後も神山の食事シーンを写真に収めると、満足いったのか携帯を鞄にしまう。その際、サイレントモードにすることを忘れない。
「あ、やっぱり気になっとったんやね？ 火急の用事かもせえへんからなぁ」
神山はまさか盗撮されているとは露知らず、先ほどまでの通知を案じる。
一部始終を隣で見ていた正門は、口が裂けても盗撮していましたとは言えず、大橋と神山をなるべく見ないようにサンドイッチに取り掛かった。
「ありがとうございます！ おかげで用事は済みました」
さぁて食べるぞ！ と大橋が意気込む。手にしたのはサンドイッチ。大きく口を開いで豪快にかぶりついた。すぐにとろけるような笑顔になる。きらきらと輝く瞳は何処までも無垢だ。先ほどまで思い付きで盗撮していた人物とはまるで別人のようである。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 406人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「かみしげ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
せろ(プロフ) - ミウさん» お初目にかかります、せろです。この度はご感想、ありがとうございました。何度も読み返して頂いているとのこと。本当に感謝しかありません。きっと近日中には続編が上がるはず。気長にお待ちいただけると幸いです。寒い日が続いています。体調にはお気をつけ下さい。 (2020年11月2日 20時) (
レス) id: c4282b60a2 (このIDを非表示/違反報告)
せろ(プロフ) - 憂さん» お初目にかかります、せろです。この度はご感想いただき、ありがとうございました。本当に感想をいただけることが励みになっております。微力ながら憂さんの活力になれていると嬉しいです。少しずつ今書いています。温かいお言葉痛み入ります。憂さんもご自愛ください。 (2020年11月2日 20時) (レス) id: c4282b60a2 (このIDを非表示/違反報告)
せろ(プロフ) - ま。さん» お初目にかかります、せろです。ご感想、ありがとうございました。今回の更新は私もきゅんきゅんしてました。正門君に…っは！Jr.の子達も出して大所帯となってきました。きっと今後はしげちゃんがきゅんきゅんさせてくれるはず…。今後もお楽しみ下さると幸いです。 (2020年11月2日 20時) (レス) id: c4282b60a2 (このIDを非表示/違反報告)
ミウ(プロフ) - はじめまして。何回も読み返したくなるくらい面白くて好きです！これからも無理なさらない程度に頑張ってください。更新楽しみにしています(*´`) (2020年11月2日 11時) (レス) id: 118c412c42 (このIDを非表示/違反報告)
憂(プロフ) - はじめまして。とっても楽しく拝見させていただきました！これからも更新楽しみにしています！無理なさらずにがんばってください(^^) (2020年10月30日 3時) (レス) id: 1b0f5e1577 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：せろ | 作成日時：2020年10月17日 2時
