見くびらないで ページ30
「お前の話だと、最期は石を詰められて死ぬのかおれは」
『えっ!まさか!そういう意味ではなくてですね!?…もう、意地悪を仰らないで下さい…!』
「ああ、悪かった」
『え…』
カタクリ様に謝られてしまった。
「なんだ」
『…いいえ、なんでもありません』
柔らかな空気に、私はそれ以上何も言わないことにした。
真っ直ぐな方だ。そしてやっぱり、ふと見せる幼さが可愛らしい。
こんなに素敵なところを知っても、きっともっと私の知らない魅力が沢山あるのだろう。
残りの時間で、あとどれだけの魅力を私は――
そこまで考えて、はたと気付く。
カタクリ様はご自分のお顔を【バケモノ】だと思っていて、それが私を【幻滅させる】と思っていた…?
『待ってください!?』
「!?突然どうした」
『これがカタクリ様に幻滅する方法ですか!?お顔を見せるのが!?』
「…そのつもりだったが、お前には通じなかったようだ」
『いやいやいやお待ち下さいカタクリ様!通じなかったというか、それは無理があります!』
「…何故だ」
『たとえ本当に私がカタクリ様のお顔を恐いと思ったとしてもですよ?それだけで幻滅するだなんて、カタクリ様はちょっとご自分の魅力を理解していなさすぎるのではありませんか?』
「!?何を言って…」
『たとえお顔が恐かったとして、それを補って余りあるものをお持ちなのに、それは過小評価が過ぎるというか…』
たった2日お傍にいただけの私ですらそう思うのに、私が知る以上の魅力を知っている人なら余計にそう思うはずだ。
カタクリ様はどうも、ご自分のことに無頓着なところがあるように思えてならない。
もしくは―。
『もしくは私を見くびっています』
きっぱりと。私は真っ直ぐにカタクリ様を見つめてそう告げる。
「な、に…?」
『私は戦闘能力など持ち合わせていない弱者です。恐ろしいものを見て恐ろしいと思うこともあります。けれど自分で見て、自分の心で素敵だと、魅力的だと感じたものを、たかが容姿が恐ろしいというだけで覆す程、弱い心は持ち合わせていません』
「……」
『それに…ふふっ』
「…何がおかしい」
『だって』
お顔が恐いくらいで私が幻滅するわけがないのだ。何故なら。
『既に殺される恐怖を与える方に、お顔が恐いくらいでどうにかなるわけないじゃありませんか』
おかしな話だ。死の恐怖すら超える願いを抱かせておいてそれはない。
「…時々、お前が死ぬ事を忘れそうになる」
なんておかしな話。なんておかしな人。
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雪見もち(プロフ) - 最近カタクリ様などハマりした女でしたが露木様の素晴らしい作品により一層好きが溢れて、ずっとニヤニヤしながら拝見させて頂きました!二週も読み直したお話は初めてです…!本当に素敵な作品をありがとうございました!! (2020年7月25日 20時) (レス) id: fce5f8b205 (このIDを非表示/違反報告)
露木アマナ(プロフ) - 車輪さん» 車輪さん、ワンピースの世界へお帰りなさいませ!カタクリ様にはまられたとのことでおめでとうございます!(?)こちらこそ、出会ってくださってありがとうございます…!嬉しいお言葉ばかりで、読み返してくださるなんて感激です;;コメントありがとうございました…! (2020年4月25日 0時) (レス) id: 0b597cfcac (このIDを非表示/違反報告)
車輪(プロフ) - 数年追えていなかったワンピースを最近また追い始め、カタクリにドはまりして小説を漁っていたところこの作品に出合いました。続編も含め本当に面白かったです!読み終えてすぐに読み返しに入った夢小説はこれが初めてです。この作品に出合えて本当によかった…! (2020年4月24日 20時) (レス) id: b8a796d02f (このIDを非表示/違反報告)
露木アマナ(プロフ) - ヒロさん» ヒロさんコメントありがとうございます!尊いなんて嬉しいです;;ありがとうございます(;ω;`)もっともっとハッピーになるように頑張りますね! (2019年9月22日 9時) (レス) id: be3bf55a7b (このIDを非表示/違反報告)
ヒロ - 読んでる間に尊さで何度昇天しかけた事か…………!こんなに尊い小説初めて読みました!最後のハピエンで無事尊死しました( ˘ω˘ ) (2019年8月17日 5時) (レス) id: a8a8fc489f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:露木アマナ | 作成日時:2018年6月8日 0時