１０４話 ページ25
町が迷宮の外に放り出された。
それは直感で、窓から見た空の色や魔素の流れで感じ取ったものだ。
安全なはずの迷宮から町が放り出されたともなれば、異常事態と言わざるを得ない。
私は居ても立ってもいられず、自宅から外へ飛び出した。
町ではマサユキさんが住民たちの避難誘導を手伝って下さっていた。
「マサユキさん！」
「あ、Aさん……」
「何かお手伝いできることはありますか？」
忙しなく働くマサユキさんに、私ができることはないだろうか、と声をかけてみた。
マサユキさんは一瞬驚いた表情になり、少し後に困った表情になってしまった。
出過ぎた真似をしてしまっただろうか……？ 声をかけた後から不安になってきてしまった。
すると、マサユキさんではなく一緒にいたヴェノムさんが私に声をかけてきた。
「ラミリス様から突然呼び出しがありまして、そろそろ切り上げるところでした」
「そうなんですね。それでは……」
「A様も一緒に行きましょう」
ということは後の引継ぎを私が担っても良いのではないだろうか。そう提案しようとしたらヴェノムさんに言葉を遮られた。
「おい、Aさんもって一体どういう……」
「それはだな……」
ヴェノムさんがマサユキさんに小声で話をしている。内容は聞き取れなかったけど、私に聞こえないようにしているようなので聞いてはいけないことだったのだろう。
「Aさん、僕と一緒に来てください」
「わかりました、でも後の処理は……」
「それは我らにお任せください！」
乱入した義勇軍に促され、私達は七十階層に向かったのだった。
＊
マサユキとヴェノムが小声で話をしていた内容――
「言っておくが、俺よりもA様の方が遥かにお強い」
「それは知ってるよ……」
マサユキにもそれは周知の事実だった。ディアブロの妻であり、聖人でもあるAは遥かに強い。
「それとAさんと行動を共にするのはどんな理由が……」
「まず第一に、迷宮内の方が安全だからだ」
迷宮内では"復活の腕輪"の効果が発揮され、死んでも蘇生する。ヴェノムはそれが言いたいのだろうとマサユキは察した。適応能力の高い彼女ならば、行くと言った時点で"復活の腕輪"を自ら身に着けるだろう。
「他にも理由があるんだろ？」
「お前とA様が一緒にいることで、両方の安全が確保できる」
「確かにな」
マサユキはヴェノムの言ったことに同意せざるを得ず、Aを連れていくこととなったのだった。
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流氷華(プロフ) - 深淵さん» 何度も読んでいただき、また、お褒めの言葉をいただきありがとうございます。あと少しで完結となりますのでもう少しだけお付き合いいただければ幸いです。 (2023年4月17日 18時) (
レス) id: c925b9584d (このIDを非表示/違反報告)
深淵 - 何周も読ませてもらってます…！続き、楽しみです！神作を作ってくれてありがとうございます…！ (2023年4月16日 19時) (レス) @page30 id: 1beab73a6d (このIDを非表示/違反報告)
流氷華(プロフ) - ユノンさん» ありがとうございます！いまやっている原稿が少し厳しい状況でして…お待たせしてしまいすみません。書けそうなタイミングになったら更新いたします。 (2023年4月11日 0時) (レス) id: c925b9584d (このIDを非表示/違反報告)
ユノン - 続きを楽しみにしてます！ (2023年4月10日 21時) (レス) id: f5fff43cec (このIDを非表示/違反報告)
流氷華(プロフ) - 悠希さん» ありがとうございます。ディアブロは妻を危険に晒さないために色々策を巡らせてたりします。悪魔らしいですね (2023年1月5日 16時) (レス) id: c925b9584d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：流氷華 | 作成日時：2021年6月7日 0時
