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教室に入ったら、最後のホームルームを待つ3-Aの教室は賑やかで。
生徒たちはみんな、終わってしまう寂しさと、卒業式への高揚感が入り混じった顔をしてる。
由梨「A、おはよ！」
「おはよう」
由梨「はぁぁ、ついにこの日が来ちゃったねー」
「…うん」
由梨「私、式の最中絶対泣く」
「私も(笑)」
由梨「あー、卒業したくなーい」
「でも由梨、4月から樋口先輩と同じ大学通えるじゃん」
由梨「まぁ…それはね」
はにかむように笑う、相変わらず "恋する乙女" の由梨。
由梨「でもやっぱり女子高生じゃなくなっちゃうのは寂しいっ」
「(笑)、…そうだね」
由梨「松本先生と櫻井先生にも会えなくなっちゃうしさー」
「……」
机に頬杖をついてぼやく由梨を見つめながら、その言葉にきゅうんと胸が詰まる。
今日が終わったら、もう先生は私たちの先生ではなくなる。
もうこの場所で、先生してるところを見ることは出来なくなる。
でも私は…。
ガラガラっ
日直「きりーつ、れーい」
生徒「「「「「おはようございまーす」」」」」
日直「ちゃくせーき」
翔「おはよう」
真っ白なYシャツに、赤のネクタイ。
黒に細いグレーストライプのスーツ。
眩しいくらいの爽やかさを身に纏った、櫻井先生。
翔「なんかみんな…緊張してる？(笑)」
教卓の向こう側から教室を見渡して、ちょっとやんちゃな顔で笑う。
さっきまであんなにどSっぷりを発揮してたなんて誰も想像できないくらい。
もうちゃんと、"爽やか先生" の顔。
……やっぱり、超かっこいい。
出席簿を教卓に置いて、スーツの袖口を直してるその姿に見惚れてたら。
「あ…」
スーツの袖口から覗くシャツの袖に、桜の花びらのカフス。
ネクタイの真ん中に、お揃いのネクタイピン。
あれ…、留学前に先生と逃げた旅館で。
誕生日プレゼントって、私があげた…。
―― "でもまぁ、ありがたく頂戴します"
「…っ」
また涼しい顔で、突然のサプライズ。
先生って、ほんとずるい。
ずるくて、どSで。
なのにこうやって、すぐに私の心を揺さぶる。
溢れるほど、先生でいっぱいにする。
込み上げる涙を堪えて、両手を口に当てて声を殺す。
教卓から顔を上げた先生が、ふわっと優しく微笑む。
翔「…じゃあ、最後のホームルームを始めます」
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作者名：あげは
| 作成日時：2016年7月6日 1時
