冬はつとめて/sm ページ15
ふと目が覚めた。
閉められた薄いカーテンからは、少しだけ光が差し込んでいる。
隣では、すやすやと彼が眠っていた。
ちらりと時計を見ると、朝の6時前。
もう一度目を瞑る気になれず、そっと布団を抜け出してダウンを着込み、ベランダに出た。
「寒っ…」
ついそんな声が漏れるほど、冬の早朝の気温は低い。
それと同時に、空気は凛と澄み渡っていて、とても気持ちが良かった。
清少納言の言うことも、あながち間違いじゃないのかもしれない。
寝巻きの上にダウンを着ただけの私には堪えるものがあったが、そのまま柵に頬杖をついて太陽の昇る様を見ていた。
幾程か時間が経ち、後ろの戸が開いた。
「おはよう」
「…早いんだな」
「目が覚めちゃった。今何時？」
「7時前。いつからここにいた？」
「6時くらいかな」
そう私が笑うと、彼は目を丸くしてこちらに近づいてきて、そっと手を取られる。
「な、なに」
「…冷たい」
「そりゃそうでしょ」
「ちょっと待ってて」
彼はベランダの戸を開けたまま、キッチンで何か飲み物を作っているようだった。
部屋の暖かい空気が逃げるのもなんだか勿体ない気がするが、まぁこれはこれでいいかもしれない。
ほんの少しの暖かさも、今の私にとっては有難かった。
車が何台か、道路を走り抜けていった。
「はい」
「ありがとう」
熱すぎない程度に作られたココアは、冷えきった私を芯から暖めてくれるようで。
彼のことだから、多分コーヒーを淹れたのだろう。
私の手の中のものと色違いのものが、彼の手に握られていた。
そのままどうでもいい下らないことをだらだらと話す。
もうお互いマグカップには何も入っておらず、日も昇りきっていた。
「そろそろ朝ごはん作ろっか」
「…そうだな」
部屋に入ろうとしたそのとき、手をひかれた。
「…スマイル？」
彼を振り向くと、どこか迷っているような、それでも、どこか決心したような、そんな表情をしていて。
「…結婚、しませんか。俺と」
何を言われるのだろう、なんて、不安に思っていた。
未だ冷気の中にいる彼に飛びつく。
「ちょっ、Aっ」
彼は慌てながらも、しっかりと私を抱きとめてくれた。
「………結婚しよう」
ムードもへったくれもない、彼のプロポーズ。
なんの前触れもなく告げられたそれが、こんなに嬉しいことだなんて思わなかった。
私とスマイルが出会って、5回目の冬だった。
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空羽(プロフ) - みあさん» 初コメ…ですかね！？コメントありがとうございます！そう言ってもらえて嬉しい限りです…！！ありがとうございますm(__)m (2020年2月22日 23時) (
レス) id: 295f716bc6 (このIDを非表示/違反報告)
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