３ ページ36
.
そういう訳で紆余曲折(くじ引き)あり、マンネの僕にその問いが託されてしまった。
まあ、それも三日前の話なんだけど。
「スンチョル？」
「Aヒョンはクプスヒョンと同室だし、付き合いも長いじゃないですか」
「そうだね」
「何かあったのかなって」
「ああ、オレが今ちょっと困らせてるんだよ。スンチョルを、」
「え？」
「……ディノから見たスンチョルは怒ってるように見えた？それとも悩んでるように見えた？」
「いや……どうかな。うーん、怒ってるようには見えなかったですけど……」
「そっか」
「ヒョン、いったいあの人に何をしたんですか？」
少し茶化すようにAヒョンを覗き込むと、笑いながらも困ったような顔をされた。
どうやらその内容については言う気がないらしい。
「ねえディノ、最近泣いたのっていつ？」
「唐突ですね、いつだったかな」
「じゃあ、オレが一週間以内に泣かせようかな。ディノの事を」
「いきなり何を……僕は多分泣きませんよ」
「賭けてもいいけど？オレがディノを泣かせられなかったら、何でも好きなものを買ってあげよう」
「じゃあ僕が泣いたら？」
「何もいらないよ、どうせディノは泣くんだから」
「泣きませんって」
「そうかなぁ」
「忘れてるかも知れないのでAヒョンに教えてあげますけど、このグループでマンネな僕も家に帰ると長男ですからね」
「関係ある？」
「あ、ありますよ……多分……」
そう言葉を濁すとAヒョンが笑う。
ちょっと悔しい。
「……じゃあ僕も一週間以内にヒョンの事を泣かせてあげましょう」
「それは賭けにならないんじゃない？」
「どうしてですか、ヒョンは泣かないから？」
「ううん。ディノは知らないかもしれないけど、オレはこう見えて結構泣いちゃうタイプなんだよ」
「僕は一回も見た事ないですけどね」
「ここに目薬があればいつでも見せてあげるのに」
「はあ……ヒョンはすぐそうやってふざけるんだから」
「こんな事でも言ってないとやってられないんだよ」
そう言って相変わらず緩く笑うヒョンを見ながら立ち上がる。
ソファに身を預けたAヒョンが「またね」と手を振った。
目を閉じて肩を竦め、呆れたように首を振って見せると、Aヒョンの笑う声が聞こえてくる。
僕もAヒョンも一週間以内に泣くことなんて絶対に無いだろう。
こんな賭けは最初から不成立なのだ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1552人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
せの(プロフ) - ありさん» ぜひぜひ！ありがとうございます！頑張ります。 (2019年7月15日 9時) (
レス) id: 350915b2b6 (このIDを非表示/違反報告)
あり(プロフ) - お返事ありがとうございます！二次元にあまり詳しくないものである程度予習をしてから読ませて頂きます！ついに最終章といったところですね！頑張って下さい！！ (2019年7月12日 15時) (レス) id: ab6122f7a0 (このIDを非表示/違反報告)
せの(プロフ) - ありさん» ありがとうございます！二次元の方から来たのでご期待に添えるか解りませんがプロフの方にURL張りました。お暇なときにどうぞ (2019年7月10日 19時) (レス) id: ce3e37b412 (このIDを非表示/違反報告)
あり(プロフ) - 今までに無いタイプのお話にリアルな描写がとても好きです!どんな結末を迎えるのか楽しみにしています(’-’*)因みにせのさんのTwitterやホームページはありませんか？(あまりに好きすぎて他のお話があれば読んでみたいのですが...) (2019年7月10日 14時) (レス) id: ab6122f7a0 (このIDを非表示/違反報告)
せの(プロフ) - あずささん» ありがとうございます！頑張りますね (2019年7月9日 8時) (レス) id: cda4c47062 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：せの
| 作成日時：2019年6月23日 0時
