私も生きてたのに

玖 ページ9

「竈門Aさんは鬼です。ですが、我々の知る鬼とは性質が大きく二つ、異なります。

異なる点として一つ目、人間を喰べる代わりに、接吻をして生きる鬼。日に当たっても死なず、体力を失えば鬼の本能に従い、近くの人間を襲う。

二つ目、戦闘能力が著しく低く、人間に危害を与える可能性が無い。
これは元々、心臓の病気を持っていたからだと思われます。」


「柱で話し合った結果、人間として扱う意見にまとまりました。御館様からの、裁決を頂きたいのです。」


返答を待つ間、Aさんは冨岡さんの羽織りをきゅっと握った。冨岡さんも上から自身の手を重ね安心させるようにした。

御館様は、あまね様に支えられてAさんに寄り添う。
そしてその手をAさんの頭に持っていき、ふわりと優しく撫でた。



「私も、Aが人間として生きることに賛成だよ。」



その言葉にふっ、と肩の荷が降りる。
ずっと不安げだったAさんの表情も明るくなり、白百合のような輝きを取り戻した。

Aの人間としての生を認める文を頂き、蝶屋敷に戻った。



「良かったですねAさん。」


「沢山、ありがとうございます。本当に感謝しています。」


「よく頑張りましたね。」



花が開いたように綺麗な笑顔を作るAさんの頭を撫でる。
今後の話の結果、Aさんは冨岡さんの屋敷で預かることになった。これは、どうなることやら。楽しみですね。

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冨岡と手合わせをしようと屋敷を訪ねて来たら、微量な鬼の気配がした。
少しの気配をたぐり寄せて屋敷の庭に走ると影を辿って木の下をきゃっきゃっと歩く餓鬼が居た。



「殺ってやらァ」


「…っあ！」



刀を抜き、首を切ろうとすると餓鬼は何か紙を俺に見せつけた。
紙には御館様が書いた文字。内容は竈門Aを生かすと言う文言。



「…お前が、胡蝶と冨岡が言ってた接吻の鬼かァ。」



仕方無く刀を鞘に収め、餓鬼に冨岡の居場所を聞く。冨岡は居ないらしい。

柱合会議で、鬼で接吻を求めて生きるとか意味不明な鬼の存続を話された時はキレそうになったけどよ。



「(随分とキレーな見た目してんな)」



子供でもかなり整った顔立ちをしているその餓鬼に興味が沸いて仕方なかった。

拾→←捌

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