私も生きてたのに

参拾 ページ30

Aちゃんは煉獄さんの訃報を聞いて落ち込んでいた。
でも、それでは煉獄さんも悲しんでしまう、と炭治郎が教えて少しずつ前向きになってきた。



「善逸さん、伊之助さん。お疲れ様です。」



炭治郎は煉獄さんから預かった言葉を伝えに行っているので今は居ない。
厳しい特訓を終えてAちゃんに泣きつきたいが、俺の汗が付いては申し訳無いので我慢した。
「あ、そうだ」と伊之助が何かを思い出したらしく、Aちゃんに向き直った。



「A、あのホワホワするやつしてぇ」



そう言ったかと思ったら、伊之助はAちゃんの肩を掴み顔を近づけた。
驚いても、固まっていられずに直ぐに二人を引き剥がそうとする。
伊之助は被り物を頭に乗せて、綺麗な素顔を晒し、益々顔を寄せた。




「……っ伊之助！！」


「…！」



懐から瞬時に刀を抜いた。
突然鬼が現れたからだ。

蝶屋敷の庭の地面から這い出た三匹の鬼。しのぶさんに迷惑を掛ける訳にもいかないから、呼吸は使えない。



「伊之助は右から狙え！俺は左から行く！」


「俺様に指示してんじゃねぇ！！」



アオイちゃん達にも被害が出るかもしれないので、一刻も早く正確に首を切った。
復帰への練習には丁度良かったのかもしれない。


「っは…！！」


単純な技術と立ち回りで倒さなくてはいけなかったから、少し手こずった。
Aちゃんに無事かと駆け寄った。



「大丈夫！？怪我は無い？怖かったでしょ…」



Aちゃんの肩に手を置いて、無事を確認した。Aちゃんは鬼の姿を見て、泣きはしない物の不安げだった。



「大丈夫…？接吻…」


「…大、丈夫です」



何だか腹の辺りが疼いて、頭に靄が掛かる。
自分の体が自分の物で無くなる様な気がして、腕が動くままにAちゃんを優しく押し倒した。



「っは」


「ん、ん」



「お、おい！紋逸！」



柔らかい物同士を当ててAちゃんの胸元に手を置く。
暫く口を合わせていれば、靄はすーっと消え本能を取り戻した。
すると、Aちゃんは反比例する様に息苦しそうになっていた。



「A、大丈夫か！おいゴラァ紋逸、何しやがった！？」


「お、俺…何を…」



伊之助はAちゃんを起き上がらせて接吻をする。



「っ…ん、ふ」


「ん、っう」



何度も接吻をしているとAちゃんは平常を取り戻した。
伊之助に接吻をされているのを見るのは嫌だったけど、俺が言えた立場じゃないから、どうしようもなく眉を下げて見ていた。

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