＊ ページ43
「……寒いですね」
あのときと同じ言葉を溢す。これでは返事になっていないことは承知の上だが、今はただ、三ツ谷にすがっていたい。２回目にもなれば意図を察してくれたようで、おずおずとAの背に腕をまわしてくれた。
温かくて、落ち着く。付き合ってもいない同級生の男子に抱き締めてもらうなんて、本当はいけないことだとわかっている。でも三ツ谷がこうして受け入れてくれるから、どうしても我儘になってしまうのだ。
彼の耳が赤い。それが自分に対してだけだったら良いのに、なんて柄にもないことを思ってしまった。……これじゃ彼のことを意識しているみたいじゃないか。
「ごめんな……」
「一さんが謝ることなんてねぇよ。オレも変なこと聞いたし、おあいこだろ？」
「……優しすぎるやろ……」
三ツ谷のせいでまだ涙が止まらない。彼の背に軽く手をまわすと、自身の背にまわされた腕に力が籠った。少し苦しいがこの方が嬉しい。
「私、根っからのオタなの」
「楽しそうだよな」
「否定されたくないの」
「オレが肯定するよ」
「できることいっぱいあるの」
「すごいよな」
「いつも我儘ばっかりなの」
「応えてあげるよ」
「口悪いし方言直せないの」
「そのままで良いよ」
「……三ツ谷君がいなきゃ嫌なの」
「……オレも」
ああほら、やっぱり彼はAが求める言葉を息をするように言ってくれる。そんな三ツ谷がAは＿＿なんだ。＿＿？その言葉が出てこない。こんなときまで自分を保とうと抵抗してしまっているのか。
もう、そんなことしたって無駄なのに。
もう、気づいてしまったのに。
「……ありがと。だいぶ落ち着いたよ」
「なら良かった。……紐、緩んじゃったな」
緩んでほどけかけてしまった袴風スカートの紐。だいぶ歩き回ったし、抱き締めてもらったから結び目が荒くなっていたのだろう。三ツ谷は丁寧にほどき、ちゃんと長さを揃えて蝶々結びにしてくれた。
紺色の空を星明かりが照らす時間帯。もうしばらくすれば花火が打ち上げられるだろう。さすがにそれまでには東卍メンバーのところに戻らなければいけない。
三ツ谷はAの手を引き、人混みの中を歩き始めた。自分よりも大きな背中が頼もしい。
いつか、＿＿と言えるようになるといいな。
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甘川カズ子(プロフ) - コメ欄が最高すぎたので読もうと思いますありがとう☺️ (9月1日 10時) (
レス) id: 78f9ccd2f5 (このIDを非表示/違反報告)
柳(プロフ) - クッソイケメンじゃん。聞いてねぇよ。まさかめちゃくちゃイケメンとは、思わんやん。やべぇ好きだわ… (2021年7月30日 17時) (レス) id: b155e22954 (このIDを非表示/違反報告)
匿名希望：我妻さん(プロフ) - 柳さん» おつかれサマンサ(違うそれは別のネタ) (2021年7月30日 17時) (レス) id: 590a3884b3 (このIDを非表示/違反報告)
柳(プロフ) - 堕ちたわ。うんもう、夢にまで出てきた。 (2021年7月30日 17時) (レス) id: b155e22954 (このIDを非表示/違反報告)
匿名希望：我妻さん(プロフ) - 『夏祭り』が終わったら続編いきます (2021年7月28日 17時) (レス) id: 590a3884b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：匿名希望:我妻さん x他1人 | 作成日時：2021年7月22日 13時
