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世界は理不尽に満ちている。人の悪意、生じる呪い。呪術師に限らず、人はそういった苦みを噛みしめ、諦めを知り、絶望を積み重ねて大人になる。
七海はそれを知っている。五条は、七海がそうやって出来た大人であることを知っている。
だから、彼は七海に語り掛ける。
「僕らみたいなのは、そうやって心に回った毒を吐き出す手段を知っている。でも、多感な時期の若人は別だ。一度の毒が心を壊すこともある」
「子供に残った毒を処理してやるのは、大人の役目でしょう。教職であるアナタの方が存じているのでは?」
「分かってるよ。だからオマエと話をしにきたんだ」
グラスの中身を飲み干して、宵蔵のグラスも空になっていることを確認すると、五条はバーテンダーに注文をつける。
「"シンデレラ"を3人分ね」
「冗談でしょう」
「マジで?」
先の注文に輪をかけて甘いカクテルが、自分たちの分も用意されたことに七海は目を細めた。当然ノンアルコール。ミックスジュースの類いだ。
文句を言いたげな七海たちを無視して、五条は視線をバックバーの棚に向けながら、話を続ける。
「一度ね、オマエに預けてみたい子がいるんだよ」
「伏黒君ではないでしょう?」
「虎杖悠仁。知ってるだろ」
「あれ、でも悠仁は……」
「…………亡くなった、と聞いていましたが」
「呪いの王を宿しているんだ。"死者を蘇らせる人形"なんてインチキとは、ワケが違うんだよ」
バーテンダーがそっと、カウンターにグラスを2つ置く。沈む夕日のような、黄金色の液体。
そのネーミングを考えれば、満月の色かもしれない。あるいはその名を口に出された、少年の髪の色に見えるかもしれない。
最後には正しき結末を迎える、ロマンチシズム溢れるお伽噺のように、そのカクテルは甘い。
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柳(プロフ) - 匿名希望:我妻さんさん» あっ、ありがとうございますぅ(ニコニコ)ほら行くぞ麗音(お姫様抱っこ) (2021年4月8日 2時) (レス) id: b155e22954 (このIDを非表示/違反報告)
匿名希望:我妻さん(プロフ) - 柳さん» どうぞどうぞ(ニッコリ) (2021年4月8日 1時) (レス) id: 590a3884b3 (このIDを非表示/違反報告)
柳(プロフ) - 匿名希望:我妻さんさん» はいそうです。お持ち帰りするね() (2021年4月8日 0時) (レス) id: b155e22954 (このIDを非表示/違反報告)
匿名希望:我妻さん(プロフ) - 柳さん» ご注文は麗音ですか? (2021年4月6日 16時) (レス) id: 590a3884b3 (このIDを非表示/違反報告)
柳(プロフ) - 匿名希望:我妻さんさん» おぉ!マジか!!楽しみにしとく!! (2021年4月3日 14時) (レス) id: b155e22954 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:匿名希望:我妻さん | 作成日時:2021年2月20日 19時