* ページ25
「呪いを祓うよりキツいよね、人の未練を掃うのは」
五条がそう呟くほどの、涙と嗚咽を伴って、呪骸はようやく回収された。
地下では分からないが、外は随分と日が傾いただろう。力ずくの遂行では心の傷は癒えなくなる。あの母親が自ら手放すまで、七海たちには待つ必要があった。
仕事していないし男なんだから荷物持ちくらい、と言われ、五条は3回ほど渋ったが、結局七海の鞄を持たされた。その中には、母親から回収した呪骸が入っている。
「七海、手提げ鞄に入れるにはちょっと重いよ これ」
「適当に捨てていくわけにもいかないでしょう。それに、大事な手掛かりですから。その人形に籠められた呪力と見比べれば、微かな残穢だけでも本体を辿れますし」
「せやけど……痕跡を隠す気はあったんやろうけど、雑すぎん?ウチ初めて見たわこんなに雑な隠蔽」
「ええ、まったく」
はたして、呆気ないほどにあっさりと、元凶の根城は見つかった。
地下街の中でも、特に古い区間。広いエリアから枝分かれして、とあるビルの地下フロアへ通じる道。地上階ヘ続く階段の裏に、入り組んだジグザグの通路。
元は居酒屋のテナントでも入っていたのだろう。立地の悪さから、真っ当な商売をするには向かないであろうその場所は、しかし、やましい商売の拠点としては適していた。
帳と同じ原理の術式で、一応、人目を避けてはいる。それでも隠蔽としては粗末と言うほかない。残穢を追ってきた3人には、まるで足跡が途切れず続いているかのように、はっきりと痕跡が確認できる。
「残穢を辿ってくるだけの簡単なお仕事でしたわ……」
「呪術師の人手不足を実感するよ。こんな三流が堂々と拠点まで構えてるってのに、野放しだったとはね」
「呪霊の強さは都心集中。呪術師の活動もそれに比例。どうしても地方へ向ける目は鈍くなりがちですから」
「この程度の悪徳呪詛師、本当なら放っておいても大した問題はないんだけどね」
「まあでも、今回はそんな話やないもんな」
宵蔵は後ろに下がり、念のためベルトに挿した拳銃に手をかけた。
どちらから、というわけでもない。しかし特に示し合わせるでもなく、お互いに足を踏み出して、
「ああいう被害を出すようになってしまっては」
「流石に潰しておかないとな」
ほとんど同時に、2人の呪術師は扉を蹴り破った。
6人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
柳(プロフ) - 匿名希望:我妻さんさん» あっ、ありがとうございますぅ(ニコニコ)ほら行くぞ麗音(お姫様抱っこ) (2021年4月8日 2時) (レス) id: b155e22954 (このIDを非表示/違反報告)
匿名希望:我妻さん(プロフ) - 柳さん» どうぞどうぞ(ニッコリ) (2021年4月8日 1時) (レス) id: 590a3884b3 (このIDを非表示/違反報告)
柳(プロフ) - 匿名希望:我妻さんさん» はいそうです。お持ち帰りするね() (2021年4月8日 0時) (レス) id: b155e22954 (このIDを非表示/違反報告)
匿名希望:我妻さん(プロフ) - 柳さん» ご注文は麗音ですか? (2021年4月6日 16時) (レス) id: 590a3884b3 (このIDを非表示/違反報告)
柳(プロフ) - 匿名希望:我妻さんさん» おぉ!マジか!!楽しみにしとく!! (2021年4月3日 14時) (レス) id: b155e22954 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:匿名希望:我妻さん | 作成日時:2021年2月20日 19時