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「...」
「分かんないよね、」
笑顔を作ってそう言う先輩。
先輩のその予想は半分合っていて、半分間違っている。
その言葉は、聞いたことがあるようなないような言葉。
ただ、少し耳にしたことがあるからと言ってむやみに語っていいものではないと悟った。
「性的マイノリティの一部なんだ。アロマンティックは恋愛感情を持たない人で、アセクシャルは恋愛から発展したそれ以上の感情を持たない、ノンセクシャルとも呼ばれてる。
もちろんどちらか一方だけに当てはまる人もいるし、俺みたいにどっちにも当てはまる人もいる。...何か授業みたいだね」
「いえ。気にしないでください」
そう返すと先輩はありがとうと言ってから、また話してくれた。
「中学の時にね、友達だった女の子から告白されて付き合ったことがあったんだ」
私は小さく頷く。
「その子とは友達としてはすごく仲良しだと思ってたけど、向こうからは『こんなに話してるんだから気付いてよ』みたいに言われて付き合った。
でも結局、人として大切だっていう以上の感情が生まれなくて。俺なりに大事に思ってたその気持ちは相手には伝わらなくて、もう嫌だって言われて別れた。
そっからはもう、流されてでも誰かと付き合うのはしないって決めてる。
誰に対しても恋愛感情を持てないのが分かってるから、むやみに傷つけられない」
「...」
「俺、昔からこうなんだよね。脈アリとか分かんないし、修学旅行の部屋で皆が話す恋バナにも全然ついていけなかった。ただでさえアロマンティック・アセクシャルなんて少ないのに、その男になるともっと少ないから自分の味方なんていないんじゃないかとも思うし。
それにこういう人間って、ドラマとかだと何か過去のトラウマがきっかけで...みたいに描かれるけど、そんなことない。気付いたらそうだっただけ。だからそう思われるのも嫌なんだ」
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作者名：キキララ
| 作成日時：2022年12月1日 17時
