九粒 ページ9
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「大丈夫かァ」
木の根っこが盛り上がっているのに気づかず転んだ。
手を差し出してくれる不死川さん。
「(大丈夫です)」
自分の鈍さが恥ずかしくて、笑って誤魔化す。
大して痛くもなく、血も出ていない。
なのに、頬に涙が伝った。
一筋流れると、次から次に溢れだして
笑みも保てなくなった。
「痛かったなァ。」
泣くほどの傷じゃないこと貴方も気づいてるでしょ?
なのにどうして、優しく頭を撫でるのですか?
転がった風呂敷を拾い、私の草履を脱がすと、背を向けてしゃがんだ。
「疲れただろォ。甘えとけェ。」
優しくされると、すぐ 縋り付くグズで。
そんな自分が大嫌いで。
“明日から頑張る”と、決断をする。
が、意志薄弱な私は、また達成できない。
声が出ないのを良いことに、不死川さんの耳元で泣き喚いた。
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「こんこん小山の子うさぎは
なぜにお耳が長うござる─────」
懐かしい子守唄。
よく、口ずさみながら散歩をした。
背中に末っ子、左手に長男を連れて。
『子うさぎの耳は、お母さんが 長い木の葉っぱを食べたから長いんでしょ?』
『そうだよ』
『じゃあ、なんで母ちゃんは優しいのに、姉ちゃんはイノシシみたいに怖いの?同じご飯食べてるのに!』
『姉ちゃんはね、君たちが見てぬ間に拾い食いを───、って誰がイノシシじゃ!!』
私の声に末っ子が泣き出して、私が慌てて歌う。
あれ?おかしいなぁ
「───それで お耳が長うござる」
何で、私が聴いてるんだ。
目を開くと、何時もより高く、そして揺れる視界。
「.........てめぇ、起きたなら自力で歩けェ」
足を止めた不死川さんは、しゃがんで私を降りした。
草履を並べ、風呂敷を握らせて前を歩きだす。
心地よい子守唄は、もう聴こえなかった。
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すず(プロフ) - ゆっくり四つ葉さん» コメント・評価ありがとうございます!モチベ上がりまくりです!これからもお付き合いください! (2020年8月11日 22時) (レス) id: 32f4d66fed (このIDを非表示/違反報告)
ゆっくり四つ葉 - 素晴らしい作品をありがとうございます!最高!眼福です!評価が一回しかできないのが辛い… (2020年8月10日 16時) (レス) id: 135b7cf6d1 (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - 玲華@パピコ同盟さん» ありがとうございます!お陰様で殿堂入り果たしました!! (2020年7月31日 0時) (レス) id: cbf19fa8a4 (このIDを非表示/違反報告)
玲華@パピコ同盟(プロフ) - 高評価100票目は!もらいました!!← (2020年7月29日 16時) (レス) id: d81ad5e1bd (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - はなさん» コメント嬉しいです!ありがとうございます!これからもよろしくお願いします!! (2020年7月24日 22時) (レス) id: 9b1477a44b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:すず | 作成日時:2020年7月19日 0時