問題児が2年生になった件について【星章学園】 (ページ15)

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11. 灰崎くんと独占欲ページ15

「おい1年、点呼終わったら早くバス乗れ」

「奥から詰めてね～」

大型バスの前でそう呼びかけるのは
お馴染み灰崎くんと霧野さん

夏空に映える桃色のポニーテールと星章ジャージ

下級生に指示を出す姿からは
以前よりも先輩らしい落ち着きが見える

昨日期末試験を終えたばかりにも関わらず
星章学園サッカー部は今日から夏合宿

「お前、酷い顔してんな」

「…唐突に何よ」

最後にバスに乗り込んだ2人は
何の躊躇いもなく隣の席に腰を下ろす

霧野の大きな瞳の下には確かにクマができていた

「どうせ試験勉強で寝不足続いてたんだろ」

「あー、まあ…」

「その状態で合宿乗り越えられるわけねえだろ。向こう着くまで寝ろ」

「いや、部屋割りとかやってないし向こう着くまでに終わらせなきゃ＿＿＿＿」

急に視界を奪われ口を噤む霧野

頭に被せられたのが灰崎のジャージだと気付いたのは
彼が愛用している制汗剤の香りがしたからか

「そんなの俺がやっとく。お前は俺と一緒でいいか？」

「…っ、笑えない冗談やめて」

「はいはい、お休み」

灰崎に腕を引かれ
霧野の頭がコツンと触れる

随分丸くなったな、と笑った霧野は
ゆっくりと意識を手放した

「…ったく、手がかかる」

「先輩よかったらこれ…あれ、霧野先輩？」

飴の入った袋を差し出した1年が
規則正しい寝息を立てる霧野を見る

部員名簿に視線を落としたままで
灰崎が口を開いた

「あー、このまま寝かせといて」

「寝てても可愛いっスね霧野先輩…」

「馬鹿、灰崎先輩の彼女だぞ！」

「あっ…すみません、つい…」

「…ま、黙ってれば可愛いよな」

ふっと目を細める灰崎に
顔を見合わせる1年

「でもあんま見んな」

"灰崎、霧野のことになると甘いんだよねぇ"
という佐曽塚の言葉を思い出した2人は
ニヤニヤと口元を緩めた

「先輩、独占欲強いんですねぇ」

「お邪魔しないよう席戻りまーす」

「ばっ…馬鹿にすんな！覚えてろよ！？」