問題児が2年生になった件について【星章学園】 (ページ13)

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番外編02. 天使の憂鬱ページ13

「Aさん、お疲れ様です！」

「ありがと」

一星くんが差し出してくれたタオルを受け取って
ゴール前に転がるボールを一瞥する

先日の試合でシュートを外してしまったことが
私の中でまだ尾を引いていた

世界を相手にどうしても尻込みしてしまう
そんな自分が嫌で堪らない

「そろそろ戻ろうか。明日の練習に響くのは良くないからね」

「そうですね」

「…はい」

自主練に付き合ってくれた野坂さんと一星くん

私の調子が悪いことに気付いているはずなのに
何も言わずただ練習に付き合ってくれた

その優しさが嬉しくて、苦しくて

「…おや、お迎えかな」

僕達はお先に、と去っていく2人と入れ違いに
やってきたのは灰崎だった

今1番会いたくない相手なのに

こんな情けない姿見せたくないのに

「遅くまでご苦労なこった」

ほらよ、と差し出された手を握ると
強い力で引かれ立ち上がることができた

「…お前さぁ、あんま思い詰めんなよ」

彼の口から出たのは思いがけない言葉だった

不器用な気遣いが伝わってくる

「シュート外すなんて珍しいことじゃないだろ。世界を舞台に戦ってる奴ら相手なら尚更だ。簡単にゴール奪える方がすげえよ」

「…煩い」

灰崎は凄い

世界を舞台に臆することなく戦って
幾度もゴールを揺らして

悔しかった

隣で見てきたから
ちゃんと努力していることも知ってる

だけど

「いつも、いっつもあんたと比べられる…！女ってだけで持て囃されてる私と、あんたは、違う…！」

これがただの八つ当たりだって
そんなこと私も灰崎も分かっていた

とめどなく溢れてくる負の感情が止められない

一瞬目を見開いた灰崎だったけど
すぐにいつもの淡々とした表情に戻ると

「…そうかよ」

それだけ呟いて踵を返す

「いたいた。2人共、そろそろお湯止めたいからシャワー浴びてきて欲しいって…」

練習場を去っていく灰崎と
すれ違いでやってきた照美さんが
私の顔を見るや否や優しく微笑んだ

「折角の可愛いお顔が台無しだよ、Aちゃん」

涙が止まるまで
照美さんは私の背中をさすってくれた