見えない、聞こえない、届かない。 (ページ1)

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1・透明人間ページ1

あの日以来、僕を見たことがあった人はいなかったらしい。

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………

「___！」
ハッと目を覚ました。
君に呼ばれていた気がして目を覚ました。君が僕を呼ぶなんて珍しいからなんのことだろうと思ったが辺りを見渡しても君はいなかったのでおそらく夢だったのだろう。
なんと嫌な夢だろう、また君のことを思い出してしまう。
君を見たら僕は君の名前を呼びたくなってしまう。でも呼んでも返事は返ってこない。
これだけなら無視されているのかと勘違いされる人もいるかもしれないがそういう訳では無い。

君には僕の声が聞こえていないのだ。届いていない。どんなに僕が叫んでも君には全くもって届いていない。なんと残酷であろう。1番呼びたい相手に自分の声が聞こえていないなんて。だから僕はいつも届きもしないのにただ独りよがりに君の名前を呼び続けるしかなかった。忘れないように。
呼んでいなかったら僕の中から君の存在が消えてしまう気がした。
それがどうしようもなく嫌だった。僕の中から君を取ってしまうのがどうしようもなく嫌だった。
なんでこんなに嫌なのかはよくわからない。それほど僕にとって君は大事な存在になっていたんだ。
忘れたくない、忘れちゃ駄目だ、忘れられたくない…そんなことを思いながら君を呼ぶにも君は僕の声が聞こえていない。届いていない。
ねぇお願いだから僕のことを忘れないで、そんなことをどうしようもなく呟いたが僕のそんな願いは届くことも知らずに無機質な壁の中に吸い込まれて消えていった。