EPISODE3 - 11 ページ21
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最初はたわいもない会話。さっさと本題に入るかと思ったが、意外と慎重派みたいだ。
「魔法の実力はもちろんのこと、音楽の才能もあるとか。」
『才能なんて…僕はまだまだ未熟です。』
「いやいや、そんな謙遜なさらなくても。…………それに、【何でも屋】としてもご活躍なさっているそうで。……本当に優秀なんですねぇ?」
少しだけ周りの空気が変わる。目付きが怖くなり、少量の殺気がぐるぐると渦巻いている。
ここからが本題か…オンボロ寮の寮長としてでも、へティー・ウィーラーとしてでもない。【何でも屋】に話があるらしい。
「一般人には縁のないような【何でも屋】と出会ったきっかけはなんだったんですか?とても長い付き合いのようにお見受けしましたが。」
『出会いなんて大それたものはありませんよ。ただの腐れ縁みたいなものです。』
「腐れ縁ってどんな〜?」
「コラ!フロイド!口を挟むんじゃない!」
「え〜?だって気になるじゃーん。ねーねー、教えてよぉ♪」
『え、えっと…』
「フロイド、お客様を困らせてはいけませんよ。」
口では静止している双子の片割れだが、ニコニコと笑っているだけのようにも見える。顔はそっくりなのに性格は真逆のようだ。
僕が苦笑いしていると詐欺師先輩は「ゴホン…」と咳払いをした。
「話を逸らしてしまい、申し訳ありません。では、本題の方に…」
「ね〜、イルカちゃんってさ、【死霊の鮮血】…って知ってる?」
「フロイド!」
「アズール、うるさい。回りくどいことしないでさっさと聞けばいいのにー。オレ、もう飽きちゃったァ。」
「おやおや。」
『イ、イルカ…?』
このフロイドって人は生粋の気分屋なのだろう。それに、変なあだ名で呼ばれたような…
「で?知ってるの?【死霊の鮮血】。」
『知ってたらどうなるんですか?』
「んー?別にどうもならないよ?聞いてみただけー。」
『なるほど。ただの好奇心ということですか?』
「……オレはー、知ってるのかどうか聞いてんだけど?さっさと答えろよ。」
さっきの子供のような雰囲気とは打って変わって、突然怒ったように声が低くなる。僕が質問し返したのが気に食わなかったらしい。
ドカッと大きな音を立てて長い足が僕の顔の横をかすった。それを見て、詐欺師先輩は頭を抱えていた。
この人は気分屋な訳ではなさそうだ。自分の思い通りにしたいだけ。ただの我儘な子供だ。
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作者名:すずは | 作成日時:2022年6月25日 19時