76話。 ページ29
信長「案ずるな、娘」
織田信長がお勝に向かって、穏やかに言った。
豆腐屋のお嬢さんに優しくする織田信長。
後世のイメージぶっ壊れそうだ。
信長「貴様はなぜ、動く必要のないところで動く？」
静と動の使い分けこそ、戦術の極意であろう」
神童「！」
信長「攻めと守りの間で両系の要を担うことが、貴様の役割ではないのか」
……えっと、織田信長、サッカー見るの初めてだよな？
初めて見て、ンな、ポジションごとの役割とかまで理解しちゃうわけ？
信長「貴様のしていることは、敵に読まれやすいのだ」
神童「……しかと承りました」
その凛とした返事を聞いた瞬間、ようやく気付いた。
拓人の拓人らしい声を聞くの、これが久しぶりだ。
どーして気付かなかったんだろ。
このとこずっと、拓人は様子が変だった。
この試合の拓人のプレーは、らしくなかったんだ。
いつもの拓人なら、自分のことで精一杯になって無理なプレーなんて絶対にしない。
拓人のこと、ずっとずっと、見てたはずなのに。
・
拓人が戻ってきて、また試合が動きだした。
桜庭たちが敵陣へ攻め込んでいく。
けど、拓人だけは動かない。
互角に見える攻防の末、前線のやつらがすっかりオメガの選手に取り囲まれた。
みさ「……囲まれちゃったけど」
フェイ「うん……神童くん！」
うさぎが相手の隙をついて、フリーの拓人にパスを送った。
でっかいのが拓人に向かうけど、今度は動きを止めてそれをかわす。
そうだ。
あれが拓人のサッカーなんだ。
なのに俺は、何も気付かなかった。
気付いたのは織田信長。
拓人を想ってたのは、お勝。
神童「《奏者マエストロ》……アームド！」
化身が今度こそ、消えることなく拓人に纏われた。
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作者名：涼風すず、手毬。
| 作者ホームページ：＼(゜ロ＼)ココハドコ? (／ロ゜)／アタシハダアレ?
作成日時：2014年8月26日 19時
