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『おーはよ』
「体調大丈夫だったか?一人暮らしだから心配してたんだけど」
眉を下げ、本当に心配そうに言うさとみを見てAの口角はさとみに気づかれない程度に小さく鼻で笑った。
さとみが自分のことを気にするなんて前世ではあり得なかったのに、と嬉しくなったのと嬉しくなった自分が滑稽に思えたのだ。
『モテモテ王子様が1人の女の子を気にするなんてね。くっそ意外』
「誰がモテモテ王子だバカ。急に倒れたヤツ心配するくらい当たり前だろ」
視線を足下あたりに移し、照れ臭そうに言い切ったさとみにAは胸が詰まる思いがした。
Aは前世さとみに罪をなすりつけたも同然なのに現世でさとみが気にかけてくれる事実が受け入れがたかったのだ。
「そういえば今週の日曜空いてる?」
『あー…ごめん、土曜なら空いてるけど日曜はちょっと予定入ってる』
憂いを帯びたAの目を見てさとみは泣きたいような懐かしいような気持ちに襲われた。
どこかで見た覚えがあったのだ。
『なんで急に?デートのお誘い?』
「バカ、お前のこと好きな男子に嫉妬されて俺がそいつに殺されたくなかったら今すぐ口閉じろ」
さとみはAを睨むようにして見たが、その目には紛れもなく愛おしさがこもっていた。
Aはさとみの目を直視していなかったため気付かれることはなかったが。
『はいはい、どこ行くの?僕楽しそうなとこじゃなかったら予定思い出すけど』
「ほんっと性格腐ってるよな…。ディズニー行かん?」
『お前が僕をディズニーに誘うとかどう言う風の吹き回し?』
呆気に取られたような顔をしたAを見てさとみはニヤッと口角を吊り上げた。
「細かいことは気にすんなって習わなかったか?取り敢えず日曜ディズニーな」
『あのー、今月中々苦しいんですけど奢りでしょうか』
若干上目遣いになったAにさとみはうっと言葉が詰まった。
「そうだけど?」
『絶対行くわ』
「やっぱお前俺のこと金蔓だと思ってるよな!?」
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