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『覚えてない、か』
学校が終わり、A以外誰もいない家の自室でAはつぶやいた。
『あんたのせいで前世も現世も人生狂わされたって言うのに?マジでふざけんなよゴミ!』
暴言を吐くAだが目には涙が溜まっている。
さとみに忘れられていたことが自分の想像していた以上にショックだったのだ。
『最期まで名前呼んでくれなかったし。最後に告ろうとしてたのに止められたし。その癖返事はするし。なんなんだよアイツ!!』
ついに涙を目から溢れさせながら叫んだAはベッドに倒れた。
『本当さ、僕だけ大事に前世覚えててバカみたいじゃん…』
Aは先程の学校での会話でさとみは覚えていないと分かってからずっと泣くのを堪えていたものだから涙が止まらなかった。
乱雑に手の甲で拭ってからスマホを取り、前世のさとみの配信の切り抜きを見る。
そう、前世のさとみと現世のさとみは顔も声も性格も驚くほどそっくりなのだ。
『星が綺麗ですねの意味も教えろよ、クソが…』
今日勇気を出して尋ねるまで、さとみの口から聞きたいと思っていたため意味は調べずにいた。
だがもうさとみから聞けることはない。それならいっそ調べたほうがいいのではないか。
そう思いAはスマホで調べ始めた。
『…クッソがよ!!あんなこと言ったくせに覚えてないとか本当ふざけんなよバカが!!前世も覚えてらんない低脳!!』
Aの顔には泣いていた跡が残りつつも口には少し笑みが浮かんでいた。
さとみは少なくとも前世、Aのことを…と考えると嬉しくて仕方なかったのだ。
『はぁーあ!!あんなやつ選ぶとか僕本当趣味悪い!けど…さ!良いじゃんね、追ってやるよ!』
Aは現世でもさとみを好きになる覚悟を決めた。
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