夜*リッパー ページ13
広い荘園の廊下が月明かりで照らされる。
時刻は深夜の二時。誰もが深い眠りについてる時間、のはずだった。
「…入ったらどうです」
違和感を感じ扉を開けてみれば目を腫らした我らが探偵、Aが飛び込んできた。
幼さの残る行動に呆れが滲みはするもののこういった甘えられ方は初めてだったので少しだけ狼狽えてしまった。
情けない小さな探偵を部屋に上げ、何か淹れるのも面倒だからと布団で包み少し見ていてやるとぽつぽつと言葉を零し始めた。
「煽られた」
「ほう、」
今に始まったことでは無いが…何か折れる原因のようなものがあったのだろう。大粒の涙が溢れ大きな染みを作っていく。
「そういったことなら相棒のジョゼフさんにでも言ってくればいいじゃないですか」
恋仲でも相棒でもない自分の所になぜ、と遠回しに聞いてみればリッパーがいいと顔をうずめる。
それは、私が貴方にとって…
「ジョゼフにはこんな情けないところを見せる訳にはいかないし、…」
マリーには迷惑をかけれないしヴィオレッタの睡眠の邪魔はしたくない。ハスターは試合に連れてくし無常の邪魔もしたくない…。
期待した自分を少し恨めしく思ってしまった。長々と連なった名前に眉をひそめこれ以上は言うなと強めに包み込む。
「私だけが頼りだと?」
「…ん、」
心地よい関係だったのだろう。
相棒でも恋仲でもない、気楽に訪問ができて語らえる相手に自分が選ばれたのは少し意外だった。
〜〜〜〜〜〜〜〜
頼られる、と言うより愚痴を聞くに近い時間を過ごした。
「そしたら煽りなんか潰せばいいとか言われてさぁ」
「ふぅん、」
「ハンターしないのは甘えだとか自分より段位が高い相手に言える言葉じゃないと思うんだ」
「へぇ」
ツッコみたい所は多々あるがまた変な時間が取られるのは嫌なのでスルーしている。
延々と続く愚痴と減っていく言葉数。
気が付くと探偵は腕の中で寝息を立てていた。
時刻は早朝の四時。
特別な相手、というにはあまりにも遠く少しだけ近しい存在だ。
私だけに見せた表情、私だけしか知らない一面。考えるだけで頬が緩んだ。
柔い髪に手を這わせ自分も眠りにつく。
明日は良い試合ができるといいですね。
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灰色のもふもふ(プロフ) - 匿名さん» コメントありがとうございます。いい試合が出来次第あげてこうと思っております!楽しみにしててください(*´ー`) (2020年5月18日 0時) (レス) id: 268e903cb0 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 更新を楽しみにしながら毎日読み返してます...好きです...気が向いたら無常との絡みもぜひお願いします... (2020年5月12日 17時) (レス) id: 776fdad7d6 (このIDを非表示/違反報告)
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