31*約束。 ページ31
「ごめんね、急になっちゃって」
信じられなかったのか、それとも信じたくなかったのか、
先輩のその後の話は頭の中をさーっと通り過ぎて行ったけど、
海外の美術を学んで、それを取り入れたオリジナティのある日本画家になりたいこと、
美術を専門に学べる、高校に通うこと、
帰国の時期は決まっていないこと、
その夢を語る大野先輩の目が、輝いていたこと
それだけは、覚えてる。
「卒業式は、出るんですよね？」
聞きたいことは山ほどあったけど、私の口から出て来たのはそれで、
「出ないの。向こうの手続きが色々あるから、待ってられなくて」
目の前が真っ暗になった、そんな気がした。
「…いつ出発なんですか？」
「明日」
「そんな…」
明日は今日の次の日で、もう数えられるくらいしか時間が残ってない。
何か言わなきゃ、って思うのに言葉が出てこなくて、口をパクパクさせるだけ。
「…ごめん、約束、破っちゃうね」
小さく呟いた大野先輩が、目を細めて窓の外に視線を送る。
窓から見えるのは、蕾が開き始めた桜。
きっと卒業式の頃には満開を迎えるはずだ。
「先輩…」
いつもこの窓から外を眺めていた大野先輩の背中は、もう見られない。
そう思ったら、涙が止まらなくて。
「急すぎますって…」
「ごめん」
聞こえるか聞こえないか、くらいの小さな声で、大野先輩が呟いた。
「あと、ちょっとだけど、お返し」
ココアとレモンティーの缶の上に、先輩がそっと置いてくれたのは、手のひらサイズの額縁。
その日は、ホワイトデーだったんだ。
「一緒に見たことにしてくれる？」
描かれていたのは、この窓から見える、満開の桜。
「Aちゃんと、おれのつもり」
制服姿の女の子と男の子の後ろ姿が、その咲き誇る桜に包まれていて、
見ているだけで、あったかい。
「ありがとうございます…」
私はきっと一生この絵を大切にし続けるんだろう、って、
決めたわけでもないのに、自然にそう思えた。
「おれAちゃんのために頑張って、すごい絵描きさんになるからさ」
普通なら恋人に送るような台詞だけど、大野先輩の言葉に、恋愛的な意味はないっていうのは、
2年間先輩だけを見続けて来た私には直感で分かる。
「いつか戻ってくるまで、応援してくれる？」
私より5センチ身長の高い大野先輩が、しゃがんで目線を合わせてくれていて。
「ずっと応援してますから…」
これは、本心。
綺麗な手が、俯いたままの私の頭を優しく撫でてくれた。
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あやか(プロフ) - 初めまして。偶然貴方の作品に出会い読ませて頂きました。大好きな翔くんだけでなく、嵐のみんなが温かく描かれていてほっこりしました。他の作品も楽しみに読ませて頂きます。ファンの一人に入れて下さいな。 (2018年2月23日 3時) (
レス) id: 270e1ea97a (このIDを非表示/違反報告)
璃夢(プロフ) - ＊___ noco ___＊さん» nokoさん、コメントありがとうございます(*´ー｀*) 過去作も読んで下さったなんて、嬉しいです！忙しさを理由に中途半端にしてしまいがちですが、頑張りますね(^^) これからも応援して頂けると嬉しいです…！ (2018年2月9日 15時) (レス) id: 5c4ad8d179 (このIDを非表示/違反報告)
璃夢(プロフ) - そらさん» そらさん、コメントありがとうございます！以前から読んで下さっていたのですね(о´∀`о) 私もこんな素敵な先生に出会いたいなぁ…と思いながら書いていたので、そう言って頂けて嬉しいです！これからも更新を頑張るのでよろしくお願いします…！ (2018年2月9日 15時) (レス) id: 5c4ad8d179 (このIDを非表示/違反報告)
＊___ noco ___＊(プロフ) - 初めまして！こんばんは('ω')/ noco と申します(･∀･) 一昨日ぐらいに璃夢さんのことを知ったのですが、とても面白くて過去作も読みましたが面白かったです！(^^) どの作品も続きが気になりますが…焦らずゆっくりマイペースに更新頑張ってくださいね(*´ω`*)b (2018年2月4日 0時) (レス) id: 5465b9f03e (このIDを非表示/違反報告)
そら(プロフ) - こんばんは、そらと申します！璃夢さんの作品、久し振りに読む事が出来てとても嬉しいです(*^ ^*) 今日のお話、とても感動しました！こんな素敵な先生たちと、学生時代に出会いたかった…と思いながら読んでいます。これからも更新楽しみにしています！ (2018年2月3日 22時) (レス) id: eac6265046 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：璃夢
| 作成日時：2018年1月28日 20時
