第９３話 ページ5
僕はエヴァンの部屋まで来ていた。
彼の許可がないと、何も出来ないからね。
……随分と窮屈になったなー。
ノックをしてから、用件を述べる。
「エヴァン？夜空だけど、今時間いいかな？」
「……A？うん、大丈夫だよ。……ちょっと待ってね」
ガチャリと鍵の開く音がして、次に扉が開いた。
エヴァンは扉をそのままおさえ、僕を中に入れてくれた。
「座って。飲み物を持って来るよ。コーヒーと紅茶、どっちがいい？」
「え？あー……紅茶」
「うん、待ってて」
そう言って、彼は僕の前から去った。
そして、5分くらい経つと、彼は二つのカップを手に戻ってきた。
そのカップをテーブルの上に置き、彼は僕の向かい側に座った。
「それで、話なんだけど……」
「その前に、Aはチェスを知ってる？」
「チェス？……知ってるけど、それが何？」
「うん、勝負しながら話さない？」
「え？」
「暇なんだよ。相手してよ」
彼はどこから出したかわからない、チェスの駒を持ちながら言った。
「……僕はただ話に来ただけなんだけど」
「Aなら、勝負しながらでも余裕でしょ？」
「……まぁ、そうだけどさ」
「なら決まり。黒と白、どっちがいい？」
「……黒」
僕は黒を選んだ。
今の僕は、裏切り者。
黒がぴったりだと思ったから。
僕とエヴァンはポーン、ビジョップ、ナイト、ルーク、クイーン、キングを盤上に順に並べる。
「……先手は譲ってあげるよ」
「なら、遠慮なく貰うよ、A」
コトン……駒が動く。
頭でチェスのことを考えながら、僕は話す。
「……それで、話だけどさ。前に言ったこと覚えてる？」
「前に？……ああ、オーラのことかな？」
「そう、その話なんだけど、パンドラのオーラが僕は欲しい」
「……パンドラ？……あのギリシャ神話の？」
「そう……できる？」
「まぁ、やれないことはないんじゃない？」
僕とエヴァンは視線を合わせずに話す。
僕たちはただ、盤上を見つめていた。
駒を一つ一つ動かしながら。
「そう、それだけ聞ければ十分だよ」
「うん、なら、パンドラの元までは僕達が連れて行くよ」
「有難う」
「それで、次は僕の話を聞いてもらえる？」
「？……うん」
コトン……
黒と白の駒が互いに侵略しあっている。
「……チェスってさ、戦争みたいだと思わない？」
「……え？」
彼が何の話をしているのか、僕には分からなかった。
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スラズ(プロフ) - 叢桜牙さん» 読んでくださって有難うございます！嬉しい限りです！続きも頑張りますね！ (2015年5月28日 19時) (
レス) id: c5bf6e2a08 (このIDを非表示/違反報告)
叢桜牙 - スラズさんの作品夜陰の剣まとめて読みました続きが楽しみです。 (2015年5月28日 18時) (レス) id: a6d00fee4e (このIDを非表示/違反報告)
スラズ(プロフ) - ゆっくりレイサさん» 有難うございます！これからも頑張りますね！ (2015年5月8日 12時) (レス) id: c5bf6e2a08 (このIDを非表示/違反報告)
ゆっくりレイサ - 続きが楽しみです！これからも頑張ってください！ (2015年5月8日 9時) (レス) id: 819aea20b8 (このIDを非表示/違反報告)
スラズ(プロフ) - ユマ♪さん» 見てくださって有難うございます！楽しんでいただけているなら、私も嬉しいです！これからも頑張りますね！ (2015年5月7日 16時) (レス) id: c5bf6e2a08 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：スラズ
| 作成日時：2015年4月29日 10時
