6聞き上手あやし上手 ページ6
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『呪いに呪いを重ねたみたいだね。』
「今回もしっかりおばさまのナイフを受けてきましたー」
週明け、空きコマに課題をやろうって話になり、
オープンスペースに集合した。
またそんなに今詰めてやって〜って、
大量の本と資料を広げてる私に、苦い顔を向けてくる。
「涼介くん出してきて嫌味言われたんだけどね、
だいぶストレートに。それが鋭くて的確で。」
『やられちゃったよ〜と。』
「うん、でもね、いちばんやっかいなのは…」
『その涼介くんって良い人なんでしょ。』
「そうなのー。丁寧に勉強教えてくれるし、
ちゃんと相談乗ってくれるし、
余計なことおばさんに言わないでおいてくれる。」
『あー典型的な反面教師だな。』
「だなあ。
だから、涼介くんを嫌いになりそうになる自分が
本当に嫌。いつも親切にしてもらってるのに、
勝手に恨むなんてどんだけ性格悪いの私。」
『本当に上手くできてるわ、お前の呪い。』
「え?どういうこと?」
『いや、なんでもないわ。』
軽くつかれたため息。
私にだって分かる。なんか言おうとしてやめたんでしょ。
「でも実際、あんなに優秀でできた人が
自分の息子だったら、近くの出来損ない見て笑っちゃうよね〜」
涼介くんと比べられたら完敗。どこも勝てない。
それはずーっと変わらないことで、
私を苦しめる事実なんだ。
『まあ、AはAでよくやってると思うよ。』
優しく頭を撫でてくれる。
目を見て話してくれる。
傷心中の私には、すごく落ち着く感じがして。
まるで…
「涼介くんみたい。」
『はあ!?普通ここで他の男の名前出さねえだろ!
特にその涼介は!まじでありえねー。』
ほんとやだもう、お前さあ、なんて
ブツブツ言いながら、隣で教科書に向かいあう。
なんか不満そうだけど、まあいっか。
これでも優斗には感謝してるんだよ。
いつも話を聞いてくれて、
助けてくれるのは優斗だもん。
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作者名:しんくれろ | 作成日時:2019年3月20日 19時