12.言っていないこと、最後の話。 ページ12
グリフィンドール生の彼らに目を向けても、彼らはばつが悪そうな顔をして目をそらす。或いは眉尻を下げて申し訳なさそうな顔をする。ハーマイオニー・グレンジャーは、何か言いたげな顔をして私を見つめてきていた。
誰一人私を睨み付けない。誰一人私に敵意を向けない。
「…どうして、誰も私を怒らないの…？」
私はミス・キャロルを傷つけたのに。彼らの、グリフィンドールの誇りを泣かせたのに。
あんな、一方的に彼女を責め立てて。彼女は間違ったことなんて言っていなかったのに。
「俺達には、天才の気持ちは分からない」
「…セオドール」
「でも…努力家の気持ちは、痛いほど分かる」
俺達は、君が努力している姿を知っている。
私の逆隣に座っていたセオドール・ノットが口を開く。じっと私を見つめて、そんなことを言う。一匹狼気味の彼は、何故か時折、私のことを気に掛けてくれていた。
「……むしろ、君は。どうしてそうも自分を悪人扱いするんだ？」
自分の呼吸が止まったのが分かった。ふいとセオドールから目をそらし、ノートに視線を落とす。黙ったままでいると、｢A｣とドラコの促す声が聞こえた。
「後で、あとで…話すから。今は、授業に集中しよ？」
お願い、と呟いた私の声が震えている。少しして、ドラコが私の背中を撫で擦ってくれた。｢わかった｣と彼は小さく応えた。｢すまない｣とセオドールに謝罪されて私は頭を振る。
セオドールが謝ることなんて何もない。私の事情に、彼らを巻き込んでしまっているのだから。
「ミス・A。大丈夫ですか？」
フリットウィック先生に心配そうに声を掛けられて、私はぱっと顔を上げた。
「問題ありません。授業を続けてください」
「そう…ですか？わかりました。」
今は、授業に集中しよう。私にはこれしかないのだから。
私が彼らに事情を話せば、彼らは私を嫌いになるかもしれない。私がスリザリンにそぐわないのは、性格だけの話じゃない。それでも私は、一人でも努力を続けるしかないのだ。全てはスネイプ先生の、スリザリンのために。
私の持てる物全てを、彼らのために捧げよう。
ドラコもセオドールも、それ以上私に何かを追求してはこなかった。ドラコに至っては先程のやりとりなんてなかったかのように、私に授業の話を振ってくれた。
嫌われたい、わけではないの。貴方達は私に優しくしてくれたから。
(でも。好かれてから嫌われるよりは、ずっと、いい。)
13.彼女の過去を抉じ開ける。→←11.それはまるで、家族のような暖かさで。
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HarukiTakuya070(プロフ) - 面白いです！早く続きが読みたいです！更新楽しみに待ってます。 (2018年4月18日 4時) (
レス) id: 53d7f5d75e (このIDを非表示/違反報告)
ヒロ(プロフ) - 薫さん» コメントありがとうございます！話の進み自体はあまり早くないですが、ゆるりとお待ちいただければ幸いです。応援ありがとうございます！ (2018年3月24日 17時) (レス) id: 63aaeb6f7a (このIDを非表示/違反報告)
薫 - この小説めっちゃ好きです！更新頑張ってください！応援しています！！ (2018年3月24日 16時) (レス) id: 79dca58f54 (このIDを非表示/違反報告)
ヒロ(プロフ) - pinoさん» コメントありがとうございます！今作のコンセプトは悪人として書かれることの多いスリザリンの“スリザリンらしからぬ一面”なので、物足りないと思われるところも出るかと思いますが、応援していただけると嬉しいです。ありがとうございます！ (2018年3月23日 23時) (レス) id: d58c85b228 (このIDを非表示/違反報告)
pino - めっちゃおもしろいです！スリザリンが好きなので、こういう作品が見れてとてもうれしいです(*'ω'*)応援しています、頑張って下さい！！ (2018年3月23日 21時) (レス) id: 7b560042ba (このIDを非表示/違反報告)
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