スパイラル[後編]

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窓から外を見ると今日は朝から雨だった。
雨は心を少し寂しくさせる。藤ヶ谷は外を見ていた北山に歩み寄りぎゅっと抱きしめる。


「ねぇ、宏光」
「ん？」
「今日さ、遅くなるんだけど…」
「ふふ、わかってる。収録だろ？」
「そうなんだよ…、宏光は今日仕事何時まで？」
「俺は、10時くらいかなぁ」
「そっか、出来るだけ早く帰ってくるから先に寝てていいからな？」
「んー。待ってる！って言ってもいつの間にか寝てるかもしれねーけど…」
「寝顔見れるの楽しみだわ」
「…いつも見てるだろ」


今日は朝から別々の仕事。番組の収録のため藤ヶ谷は帰宅が深夜近くになる。
何度か経験をしているが藤ヶ谷が遅いのはどうしても、寂しくなるのだ。画面上に映っている藤ヶ谷を見ても。
藤ヶ谷はそんな北山の気持ちを察しているため、休憩時間の合間を見て北山と電話で話したりなど、寂しくさせないように努めていた。
義務なんかではなく、進んで。
朝の行ってきます、の口づけを交わすと先に家を出たのは北山だった。今日もドラマ撮影がびっちり入っていた。


家を出て、局に入る頃には、メールが入っていた。“愛してる”と恋人の藤ヶ谷から。
北山は嬉しくなり、顔がにやけてしまう。
スマホを握りしめているとまたブーブーと、スマホが震えた。



震えているスマホを見ると、着信表示に二階堂と映されていた。
どくん、と心臓が波打つ。
電話をとることなんて出来なくて、そのままスマホを見つめる形になってしまう。
長いこと震えると、止まり、そしてまたすぐに震え出した。
北山は、二度目の電話に怖いながらも通話のボタンを押した。


「も…しもし」


恐る恐る、スマホを耳に当てる。



『もしもし、ミツ？』



電話の先には、いつも通りの二階堂の声。その声に北山は涙が出そうになると同時に少し拍子抜けする。 自分に向けられた二階堂のこの声は実に２ヶ月ぶりくらいだったから。



『今日会えないかな？』


今日は、予定では22時くらいまで仕事が入っていた。それを伝えると、じゃあその後、局に迎えに行くと言い二階堂は一方的に電話を切った。
きっと玉森のことだろうと思い、逃げたくなった。

だけど、逃げたらこの先迷惑をかけてしまう。だからきちんと向き合わなきゃいけないと、自分に言い聞かせた。
玉森のことは思い出すと心が痛む。どうすればいいか時間が経った今でも答えを出せていなかった。


二階堂に会うという緊張を心に残し、北山は仕事に没頭した。

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