スパイラル[前編]

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その後にいくつかの公演をこなしデビューが決定した。デビューと同時に離れていく距離。
二人で…出演した記念すべきドラマ...
共演は増えていくのに。
距離は開いていく。意識的に自分から置いていた。



共演中、自分だけに向けて笑う北山の笑顔。この笑顔に勝てる奴はこの世に誰もいない。自分の気持ちを紛らわすのは止めようと思い女遊びをやめた。




オレの心の中は北山一色。
北山がオレのすべて。




＊＊＊



「ミツ〜、ここの演技どうしたらいいと思う？」
「知らなぁーい。他の人が好きな玉ちゃんの手助けなんてしないしー」
「いや、役だから。協力してよ」
「ふふふ、なんなら相手役やってあげましょうか？」
「・・・・それはいい」
「なんでよ――！」




今日の楽屋でのひと場面に遭遇している。
個々にやりたいことをやっている。
そして、隅で二人は椅子に座り向き合い戯れてる。玉森のドラマの台本を手に。



視界には意識的に入らないようにしていても、声は聞こえてきてしまう。何年経ってもやっぱり嫌なものは嫌で。



じゃれてる二人を見ないように一生懸命本に神経を集中させた。いつもは集中しなくても頭にすんなりと入ってくる活字も、全く入って来ない。


結局…チラチラ鏡越しに二人を見ることになる。北山は本当にタマにだけ特別な笑顔を見せる。


今も、タマの台本に落書きしていて、それを発見したタマは本気で怒って台本を取り上げて。北山はなんだよーっと唇をすこしツンと尖らせている。そんな北山の唇にタマの人差し指が触れる。



ずきん


ずきん



何度だってヤキモチは妬くもの。慣れた…って言ったけど、慣れてなんかいないのかもしれない。心は悲鳴をあげている。



9年前に比べて増えた冠番組。放送時間。増えたものは本当に多い。そして、それと同時にオレが北山を想う気持ちも冷めることをしらない。






鏡越しで見た玉森はまるでオレのことは圏外のように心配そうな表情ひとつ見せず、台本を読んでいた。

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