暗い過去？無い無い。チートな異能力？無い無い。これはただの体質...のはず...ってか来んな！その２！

フラグ78 ページ39

一級危険異能者。
その言葉の重みに、今日も敦の手が止まった。

「私が書こうか？敦君」

パソコンの向こうからやわらかい声が聞こえてくる。
敦は静かに首を振った。


「......大丈夫です。それに、太宰さんが書いても結局僕が書き直すことになるじゃないですか」


顔を上げる。
目の前の先輩が、特務科への報告書にAの服装や趣味、好きな食べ物を書いて提出しようとしたことを敦は忘れていない。


珍しく事務作業を進んでやると思ったらあれだ。
ちょっとでも期待してしまった自分を、敦は後悔した。


文書はこっそり保存しておいたけど。
好きな食べ物はクッキー。ちゃんと覚えているけど。


太宰はまあそうだね、とへらへら笑って近くの椅子に座った。

近くでふにゃふにゃしている人がいるとなんだか気が引き締まる。反面教師というやつだろう。


気合いを入れ直してもう一度作業に向かう。が、敦の手は止まったままだった。



「Aちゃんのことが気になるのかい？」



びっくりして太宰を見ると、にやりと口元を歪ませながら椅子にもたれ掛かっている。

「ちがっ......」

心の中を見透かされたようで、敦はとっさに否定する。
しかし、太宰の鈍い目の光に敦の小さなプライドは簡単に打ち砕かれた。


「本当は？」
「......こっそり監視するなんて良くないと思って」


敦は作業を止めて太宰の方を向いた。


「伝えたら意味がないことは分かってます。でも本人に秘密でこんなことをするのは、悪いことをしているみたいで、少し嫌です」

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