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フラグ62 ページ23

黒がわさわさと動いてパークを包囲。
入口、連絡通路はすべて襤褸の集団に塞がれた。


「何て数だ...」


観覧車が回り、視野が低くなっていくにつれて来場客の恐怖がありありと伝わってくる。

銃、バール、バット、武器は多様だが丸腰の者は一人もいない。

確かな残虐性が漂う。


『........................』


これは、私が呼び寄せた厄災?

太宰さんは言った。
私には"幸せを呼ぶ"力があると。

でも、真実を知ったところで私の体質は消えない。



『私は、いるだけで周囲を不安にさらす』




ぞわり、背中に寒気が走る。

私の持つ特異な力と、私の持つ面倒な体質。
その性質のギャップに目の前が暗くなる。


「...............」




でも。


それでも。



『私には出来ることがある』




以前の私なら自分の体質を憎み、恨み、嫌った。
幸せな未来が確定していたとしても、"私が厄災を導いた"という事実だけを深く認識していた。


だけど今は違う。


どんな辛い事も幸せを内包しうるという事を知った。
そして私が、それを呼び込めるということも。



ならばすべき事はただ一つ。



『手を離してください、太宰さん』


地上はもう近い。
迷う暇なんて無い。





「異能を異能と認識して使うということは、どういうことか分かるかい?」



太宰さんは静かに確かめるように言った。
目を伏せて、今まで見たことの無い大人の顔をしている。暗い、いや黒い。


機械音が響く。おもちゃみたいに小さかった景色は現実になって膨張する。

怒声が聞こえる。恐怖の叫び声も。非常サイレンも。

決断の刻限は迫る。
観覧車はペースを変えない。




「もう君はまごうことなき異能者、一般人ではなくなる。それでも―――――――」


『良いに決まってるじゃないですか』





考えるより先に言葉が出た。
本能的に可能性を肯定した。


何より、皆を見捨てたくなかった。



これから先どうなるかじゃない。
今、何をすべきか。それが重要なんだ。


太宰さんは悪人のようにニヤリと口角を上げる。


待っていたと、今度もはっきりと聞こえた。

二人は異能者として立ち上がる。
手はもう離れている。
力がふつふつと沸き上がるのが分かる。




「さて、任務開始だ」




.

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花岳(プロフ) - チョコレヰトさん» ひゃーー!お褒め頂き光栄です......!ありがとうございます。相変わらずだらだら更新していくと思いますが必ずや完結させてみせますので!応援よろしくお願いします! (2019年2月11日 11時) (レス) id: 95c5868039 (このIDを非表示/違反報告)
チョコレヰト - おおお…面白いですね!ギャグ一直線って言うわけでもなく、かと言って重すぎるシリアスも無く…!!丁度良くて、見つけて一気読みしてしまいました…w応援してます!更新頑張ってください!いつまででも待ってます! (2019年1月27日 22時) (レス) id: 9bf0bfde55 (このIDを非表示/違反報告)
花岳(プロフ) - 結愛さん» 素敵なほのぼの文芸部だったんですね...こちらはガチガチ文芸部です...〆切前は常に修羅場で、よく悲鳴があがってます。それはそれで楽しいんですけどね!他校の部活の様子を聞けて嬉しいです!コメントありがとうございました!! (2018年9月19日 1時) (レス) id: 95c5868039 (このIDを非表示/違反報告)
結愛(プロフ) - 私も文芸部だったのですが、私の居た文芸部とは違うのですね…。(私の居た文芸部では皆好きなようにお絵描きしてました) (2018年9月17日 13時) (レス) id: 4e4bc357c1 (このIDを非表示/違反報告)
花岳(プロフ) - 紅夏さん» ありがとうございます!!!!もう、ほんとにありがとうございます。待ってる、と言って頂けるだけで頑張れます。絶対書き上げますので、待ってて下さい!、 (2018年9月17日 11時) (レス) id: 95c5868039 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:花岳 | 作成日時:2018年1月10日 23時

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