きっとこの先何年経っても。 (ページ5)

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5　「宮舘の場合」ページ5

宮館side

土曜日の昼前。
いつものように俺は店頭に立って在庫管理や会計をする。

宮「...あ、フルーツの森入荷してる」

商品を搬入すべく一度裏に戻って商品の箱を持ってくると、
見慣れた駄菓子の箱があった。

彼が喜んでくれるよう、綺麗に陳列させる。

宮「こんにゃくゼリーと、ヤングドーナツと、...ラムネが少ないな」

阿部が悲しむじゃないか。
俺たち９人の中で最も勤勉な阿部にとってラムネは糖分補給らしい。

ブドウ糖が入ってるとかなんとか言ってたっけ。

そんなこと俺がわかるわけないんだけど。笑

俺の家はこの町で長く続く駄菓子屋だ。
幼稚園の頃は余った駄菓子をポケットに入れて公園とか川に遊びに行った。
康二を除いた８人は幼馴染のようなもんだけど、
特に生まれた頃から一緒にいた翔太からはよくお菓子をねだられていた。

川沿いにある駄菓子屋とだけあって、
川遊びにきた子供たちが少ないお小遣いを片手に立ち寄りやすい店で
この町で育った人の子供心と愛を受けたこの店への愛情は
きっと他のみんなには計り知れないだろう。

たまには物思いにふけるのも良いな、
なんて懐かしんでいると店の入り口に大きな影が見えた。

宮「いらっしゃい」

岩「お疲れ。あー今日も疲れたわ」

宮「お疲れ様。フルーツの森いっぱい入ったよ」

岩「まじ！？」

182cmの高身長にムキムキな体、その上強面の一見近寄りがたい照だけど
お菓子のこととなるとくしゃっとした笑顔を見せる。
楽しそうに、嬉しそうに、
それは小学生の頃を思い出させるような子供らしい姿を眺めていると
重い材木を運んできたであろう大きな手にいっぱいのフルーツの森を持ってレジにきた。

宮「今日も相変わらずだね」

岩「これは他の奴らには渡したくないもん」

宮「ふふ、俺の店でフルーツの森の愛好家は照だけだよ」

岩「そうでなきゃ困る。」

袋にフルーツの森を詰めながら、おまけに５円チョコを数枚入れてやった。

岩「着替えたらふっかんとこ行くけど、舘さんは？」

宮「翔太と行こうかな。今日はみんな行く気がするし」

そう返すと片手をひらっと挙げて家に帰っていった。

一人になった店内に響く壁掛け時計の針の音。
そういえばあの時計、昔ふっかと翔太と遊んでガラス盤割ったな。

渡「なに時計眺めてんの？」