きっとこの先何年経っても。 (ページ20)

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向井side

あのあと解散して家で晩御飯食べたんやけど。

夜ご飯の時にな、聞いてみてん。

向「なぁおとん、コロッケ屋さんて知ってる？」

「商店街入ってばぁーっと奥まで行ったとこのあそこか」

向「そう、今日友達と行ったらばあちゃんの話してくれはって...」

「....そうかぁ。ばあちゃん感じたやろ？」

おとんもばあちゃんの優しいにおいがコロッケの優しい味と同じだとわかってたらしい。
哀愁漂うもどこか嬉しそうな表情でばあちゃんのお仏壇を見るおとんの横顔に、なんとも言えん感情になる。

「康二、鍵貸したるから晩飯食い終わったら整備室の作業室見てきてみ」

家と向井自動車は同じ敷地内にあるから夜ご飯を食べ終わってすぐ見に行った。
車を見たりはするけど、実際の作業部屋や整備室を覗くのは初めてだ。

部屋の電気をつけると奥に大きめの机があった。
机の端に四つに仕切られた写真立てに一枚ずつ写真が飾られている。

近寄って見てみると、

下がり眉の赤ちゃんを抱くばあちゃんじいちゃんの写真
坊主頭の小さい子供の七五三の写真
ばあちゃんじいちゃんと縁側に座ってスイカを食べる少年の写真
俺が撮ったじいちゃんばあちゃんの二人の写真

が入れられていた。

向「これ全部俺やん....」

写真立てをそっと手に取りまじまじと眺める。
小さい頃の記憶はあまりないが、縁側でスイカを食べたことは覚えている。
庭に向かってじいちゃんと種を飛ばして遊んでたらばあちゃんも参戦して、結局ばあちゃんが一番遠くまで飛ばして男二人がしょげるという、なんとも間抜けな思い出だ。

向「ばあちゃん....」

「康二」

向「じいちゃん....、....写真、飾ってくれてたんや」

「ばあさんが飾ったんじゃ。基本的にわしは整備してたからここはばあさんが見積もり計算したり工具の整理したり、ばあさんのほうが使ってた」

俺、ばあちゃんと一緒にここで育ってきたんや。
会いたなってもうたやんか。
ばあちゃん、見てくれてるやろか？
俺毎日楽しいで。

「大きく優しく育ってくれてありがとうな康二」

向「じい、ちゃん...っ」

「なんだ康二は泣き虫だな！男は泣くもんじゃねぇ、でもその心優しさはずっと忘れるんじゃねぇぞ」

じいちゃんが俺の頭を乱暴に撫でる。
でも優しくて、懐かしくて、

ええ家族のもとに生まれたことを幸せに感じる夜になった。