きっとこの先何年経っても。 (ページ18)

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向井side

３人で話しながらコロッケを食べとったら17時過ぎになってもうて
ラウ曰くそろそろ良い時間らしいから
おばちゃんにお礼をしっかり言うて外に出た。

湿気が多く生暖かい空気が纏わりつくような感覚に、少し顔を顰める。

ラ「よし！じゃあ連れてってあげる！」

振り返ったラウはニヤリと笑ってこう言うた。

”曇りだからこそ行ける異世界にね”

めめとラウの後を着いて歩いていると、
シャッターが下ろされた二軒の店の間に細い道が伸びていた。
アーケードはなく、普通の細道のようだ。

奥に目をやると昔ながらの日本家屋が道沿いに立ち並んでいて、
どの家にも提燈がつるされている。

太陽を飲み込む薄暗い空
家や学校の電気よりよりぼんやりとした橙色に灯された提燈
提燈の灯りで浮かび上がる石畳
石畳の奥に見える、鳥居。

急に異世界に来てしまったかのような感覚に陥った。

怖いものが苦手な俺にとってはちょっと足が震える場所ではあるけど
確かに曇りだからこそ味が出る風景であることには間違いない。

石畳の上を２、３歩歩いて気付いたんやけど、
ここの道だけ後ろから空気に押されてる感じがする。

....ちょ、普通に怖いねんけど？
写真撮るのは絶対楽しいやろうけど
これ俺無理やで....？

なんて怖気づいてたらめめが奥に向かって歩き、途中でこちらを首だけで振り返る。

目「康二、俺とラウをモデルにするんでしょ？」

振り返るめめの目にテクノカットの毛先がかかって
「妖艶」というか、「妖しげ」というか、

そこにいるのはめめであって、めめではない何かのようだ。

ラ「うまく撮ってよね、ここ雰囲気すごいでしょ？」

めめの後ろからラウが顔を出す。
肩に肘を置いて片方の口角だけをあげて微笑むラウは、

言い表すなら「ちょっと大人びたこどもの妖狐」やな。

目に映る景色から与えられる怖さと同じくらい、
関西では見れへんような異空間を撮れる現実に

胸が躍る。

向「....任してや、魅力的に撮ったるで」