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無言の車内
でも、私の心にはさっきからあの声。
北山先輩！！
…
悔しい
比べた時点で負けなのもわかってる
比べる必要がないこともわかってる
だけど、だけど…
泣いちゃいけないと思って
窓の外を見るけど
流れるいつもの景色が妙にむなしくて
気づかれないように静かに涙を流した。
赤信号で停まったと思ったら
温かくて大きい彼の左手が
私の冷たい右手を掴んでくれる。
きっと、彼は気づいてる
言わない優しさ
本当にどこまでも、彼のことが大好きなんだなって。
惚れた方が負け
本当にその通りだと思う。
無言の車内
温かい彼の手
止まらなくなる、冷たい涙
・
・
いつものように車を停めて
いつものように
彼が先に家に入る。
少し距離が空いてるように感じて
又、心が寂しくなるんだ。
手を伸ばせば、捕まえられる距離なのに
あの声が頭によぎって、その一つを躊躇してしまう。
「A？」
ただいまも言わない
玄関の扉の前に立つ私を心配そうに見てくる彼
どうして、そんなに優しい目なの
どうして、そんなに優しい声なの。
「ごめんなさい…。」
「なんでAが謝るの。」
「ごめんなさい…。」
「いいって。
Aは謝る必要ないでしょ。
今回は、まじで俺が悪い。
不安にさせてごめんね。」
ぽろぽろ溢れてきた涙は止まらなくなる
「みーくん。
ぎゅってして…。」
普段の私なら絶対に言えないけど
今はとにかく、とにかく彼に触れていたい
触れてほしい…
近づいてきてくれた彼に
ぎゅっと抱き着く
不思議だよね
大好きな人の胸に飛び込むと安心できる。
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作者名：ゆゆ＊ | 作成日時：2017年9月6日 12時
