温もりの魔法。【arsk】 ページ3
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「……あり、さか…？」
「…A…？」
数年ぶりに私の目に映る彼は、知らない内に、背が伸びていて、声も低くなっていて、私なんかよりもずっとずっと大人びていた。
彼の姿を見て、虚しくなった。
まだ、私は、子供のままであることを。
痛いくらいに痛感した。
◇
『別れよ
お前重すぎるんだよ』
何の脈略もなく届いた一通のメール。
何度も何度も、目を通して読んでみても、その文字が変わることは決してない。
そんなことを繰り返した何十回目で、私はようやく、意味を理解すると、私はスマホをベッドに投げた。
「…ははっ、さいってー…」
ここにいるはずのない男に吐き捨てる。
何度目か分からない、このくだりにも、あの男にも、それよりも前の男達にも。
全てが腹ただしくて、悔しくて。
目頭がつんと熱くなって、目から零れそうになるものを腕で無理やり拭った。
これで、もう3度目。
ぼすっと、ベッドに沈む。
私と付き合う男は決まって、クズだった。
恋は盲目、だなんていうけど。
私は、ほんとに重症なまでに盲目だと思う。
恋とはなんだろう、と恋に恋をしていたあの頃。
ただ純粋に恋をして、付き合って、いつかは生涯を共にする人ができる、なんて。
私がたくさん愛してあげれば、彼も愛してくれると。
だから、一生懸命愛してあげることは、決して苦ではなかった。
……いや、違う。こんなの、嘘だ。
私は、誰かの温もりがほしいだけ。
◇
「いらっしゃいませー！」
あの後、何を思ったのか、私はよく行く居酒屋へと足を運んでいた。
ただ、今は、この空っぽな感情を埋められる何かが欲しかったのかもしれない。
私は、空いているカウンター席に向かって座った。
店はとても賑やかで、活気づいていた。
客の中には、仲睦まじく話しながら飲むカップルもいて。
彼とは、1度も居酒屋なんて行ったことなかったな。
いつも、オシャレなカフェや喫茶店に行っていたっけ。
元々、お酒をガツガツ飲む私は、そんか姿見せたら幻滅されてしまう、と思って彼氏の前でお酒を飲む時はほんの少し飲むくらいにしていた。
今、もうそんな男はいない。
今は、ただ飲んで、何もかも忘れてしまおう。
そう思って、注文しようとした。その時だ。
「ビール1つ」
ふと、横から聞こえてきた声。
思わず目を見開いた。
はっと、振り向いた時には、もう零れていた。
「……あり、さか…？」
「…A…？」
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作者名：サンリーブ | 作成日時：2022年9月21日 17時
